三つの強さ(2024年4月1日『宮崎日日新聞』-「くろしお」)

 被災者には長かったに違いないが、もうそんなに時間がたつのかという思いがある。間もなく発生から8年になる熊本地震。昨年末に復旧した阿蘇神社の国重要文化財「楼門」の写真を久しぶりに目にした。

 完成が近づきつつあった昨年春、現地を訪れた。そこに展示されていた全壊時の写真が強く印象に残っているので、立派によみがえった姿は感慨深かった。一方、きょうで3カ月になる能登半島地震。地元の人には、まだ復興などイメージもできないのではないか。

 だが、時間がかかろうと、また完全に元通りとはいかずとも、必ず復興できると信じ踏ん張ってほしい。雑草生態学が専門の静岡大・稲垣栄洋(ひでひろ)教授の著書「面白すぎて時間を忘れる 雑草のふしぎ」よると、雑草に限らず植物の「強さ」には三つの要素があるのだという。

 (1)競争に勝つ強さ(2)耐える強さ(3)変化を乗り越える強さ―だ。これって…そのまま人間に当てはまるではないか。「したたか」という言葉は、総じてあまりいい意味で使われないが、この本に登場するあまたの雑草たちの「したたかな生存戦略」には変な言い方だが、ある種の敬意を持ってしまう。

 考えたらしたたかは、漢字で書くと「強か」だ。自然災害で日常が一変するのは忌むべき「変化」だが、それすらも「耐える強さ」でどうか乗り切ってとエールを送る。復興の途についた能登のみならず、これまで甚大な被害を受けた全ての被災地の方々へ。