被災地ではまだ約4千人が避難所に残り、ホテルや旅館で暮らす2次避難者も約3千人いる。住まいを確保し、日常生活を取り戻すことに全力を挙げなければならない。

 復興の理念として石川県は「必ず能登へ戻す」「人口減少など課題を解決しつつ、能登ブランドをより一層高める『創造的復興』を目指す」を掲げる。実現には新しい復興モデルを国と一緒に打ち出す努力が必要だ。

 復興計画の作成では、東日本大震災からの復興に携わった自治体職員やNPO、企業の参加を求め経験を生かすべきだ。地域の未来を話し合う会合も集落ごとに開き、多くの人を巻き込みたい。

 復興政策のベースは、被災者一人一人に行政側が寄り添う取り組み「災害ケースマネジメント」である。地元に戻る意思や仕事、教育で直面する問題などを聞き、復興の状況も伝えながら生活再建を支援していく。これに必要な人員は、被災した自治体が国の助成も得て基金をつくって確保するよう提案する。

 避難先での生活が長くなればなるほど仕事や子どもの教育の関係から戻り難くなる。早期の帰還のためには住宅と仕事の確保が大前提となる。

 被災地内では約5千戸の仮設住宅を早く完成させ、空き家も被災者向けに活用する。災害公営住宅の建設も促進して十分な数を確保したい。

 公営住宅には多くの高齢者が入居するだろう。後から他の施設に移らずに済むよう見守りやケアの付いた部屋、介護施設の併設など福祉の側面も入れる工夫が望まれる。

 仕事の確保、なりわいの再建も不可欠。当面は土木作業など復興に関わる仕事があるとしても、人口減少に伴って医療や福祉などの仕事は減る。広域避難者が早く戻ることが仕事の維持につながることを意識すべきだ。

 まずブランド力のある輪島塗などの伝統産業や、「輪島朝市」など観光産業、漁業の再建に力を入れる。能登産品の販売拡大に協力したい。

 国レベルでは、この地震から教訓を学び、次に備えなければならない。

 能登半島では自動車専用道路「のと里山海道」などの被害が深刻だった。半島部ではアクセス道路が限られ、災害による通行止めは救命や復旧の遅れにつながる。骨格となる道路は、大地震が起きても通行できるように路盤などの補強が必須だ。通行止めの期間を短くするため、集落ごとに復旧作業に使う重機を保管する備えも有効だろう。

 災害時に役立つとアピールしてきたマイナンバーカードは、読み取り機の不足などから避難所の運営には使えなかった。大災害に備えて機器をそろえ、避難者を管理するシステムを構築しておくことは国の役割だ。準備不足は明らかである。

 土木学会は首都直下地震の被害額を約20年間で約1千兆円と推定、事前対策により被害を大幅に減らせると提言した。未曽有の災害はどこでも起きる。孤立対策としての食料や水の備蓄、生活用水の確保策の充実に加えて、都市部への集中といった脆弱(ぜいじゃく)な国土構造の抜本的な見直しに今すぐ着手すべきである。