能登行幸啓 国挙げて復興を進めたい(2024年3月23日『産経新聞』-「主張」)

 
能登半島地震の避難所を訪問し、被災した新谷満さん(左手前)、千恵子さん(左端)親子に声をかけられる天皇、皇后両陛下。奥は坂口茂輪島市長=22日午後1時55分、石川県輪島市のふれあい健康センター(代表撮影)

天皇、皇后両陛下が能登半島地震の被災地を訪問された。

両陛下は、甚大な被害のあった石川県の避難所などで被災者らと懇談し、親身になって励まされた。

今年1月の地震発生直後から、両陛下は被災地のことを常に案じられていた。天皇陛下は2月のお誕生日に先立つ会見で、状況が整えばお見舞いしたいという意思を示されていた。

それが実現した意義は大きい。ご訪問により、復興に向けた国民の結束がさらに強まることを期待したい。

両陛下は22日、東京・羽田発の特別機で石川県入りし、陸上自衛隊のヘリなどで被害の大きかった地域を回られた。

輪島市珠洲市の避難所では、被災者と同じ目線になるように腰を落とし、「おけがは大丈夫でしたか」などと声をかけられた。一帯が焼失した「輪島朝市」の跡地も訪れ、黙禱(もくとう)をささげられた。

大規模災害のたびに皇室は、復興への機運醸成に大きな役割を果たしてきた。

平成3年の長崎県雲仙・普賢岳噴火災害では、即位後間もない上皇上皇后両陛下が現地の避難所などを訪れ、床にひざをついて被災者らを元気づけられた。そのお姿は国民の大きな感動を呼び、被災地支援の思いが一段と強まった。

7年の阪神大震災や23年の東日本大震災、28年の熊本地震など上皇上皇后両陛下が在位中に被災地入りされた大規模災害は10を超える。

天皇、皇后両陛下も皇太子同妃時代から何度も被災地に足を運ばれた。令和元年12月には即位後初の被災地ご訪問として、台風19号などで被害を受けた宮城、福島両県を回られた。

ときに被災者の手を取り、触れ合いの中で悲しみをともにし、いたわりの言葉をかけられる。それが被災者をどれほど励まし、周囲を勇気づけてきたことだろう。

241人の犠牲者が出た能登半島地震では、現在も計約9千人が避難生活を強いられているほか、奥能登地域を中心に計約1万戸が断水している。

道路の復旧や災害廃棄物の処理など、復興への課題は山積している。両陛下の被災地ご訪問を機に、国民一人一人が被災地支援の気持ちを強くし、復興を進めたい。