両陛下は、甚大な被害のあった石川県の避難所などで被災者らと懇談し、親身になって励まされた。
今年1月の地震発生直後から、両陛下は被災地のことを常に案じられていた。天皇陛下は2月のお誕生日に先立つ会見で、状況が整えばお見舞いしたいという意思を示されていた。
それが実現した意義は大きい。ご訪問により、復興に向けた国民の結束がさらに強まることを期待したい。
両陛下は22日、東京・羽田発の特別機で石川県入りし、陸上自衛隊のヘリなどで被害の大きかった地域を回られた。
輪島市と珠洲市の避難所では、被災者と同じ目線になるように腰を落とし、「おけがは大丈夫でしたか」などと声をかけられた。一帯が焼失した「輪島朝市」の跡地も訪れ、黙禱(もくとう)をささげられた。
大規模災害のたびに皇室は、復興への機運醸成に大きな役割を果たしてきた。
平成3年の長崎県雲仙・普賢岳噴火災害では、即位後間もない上皇、上皇后両陛下が現地の避難所などを訪れ、床にひざをついて被災者らを元気づけられた。そのお姿は国民の大きな感動を呼び、被災地支援の思いが一段と強まった。
7年の阪神大震災や23年の東日本大震災、28年の熊本地震など上皇、上皇后両陛下が在位中に被災地入りされた大規模災害は10を超える。
天皇、皇后両陛下も皇太子同妃時代から何度も被災地に足を運ばれた。令和元年12月には即位後初の被災地ご訪問として、台風19号などで被害を受けた宮城、福島両県を回られた。
ときに被災者の手を取り、触れ合いの中で悲しみをともにし、いたわりの言葉をかけられる。それが被災者をどれほど励まし、周囲を勇気づけてきたことだろう。
241人の犠牲者が出た能登半島地震では、現在も計約9千人が避難生活を強いられているほか、奥能登地域を中心に計約1万戸が断水している。
道路の復旧や災害廃棄物の処理など、復興への課題は山積している。両陛下の被災地ご訪問を機に、国民一人一人が被災地支援の気持ちを強くし、復興を進めたい。