女性公務員のリアル(2024年4月1日『』-「新生面」)

 年度替わりに合わせたかのように、桜が見頃を迎えている。ことしの新年度は月曜始まりで区切りも良い。入社当時の記憶がすっかりあいまいになったわが身もフレッシュな気持ちになるから不思議だ

▼本紙の紙面や電子版に連日、自治体の異動名簿が掲載されている。幹部職員には顔写真が付いているため大半が男性だと一目で分かる。課長・係長級だと女性も多いが、福祉や健康分野、支所などへの配属が主なようだ

▼なぜ女性管理職は少なく配置も偏るのか。『女性公務員のリアル』(学陽書房)の著者・佐藤直子さんは、川崎市職員として働きながら感じた「モヤモヤ」の正体を探ろうと、公務労働のジェンダー研究を始めた。約300人への聞き取りとアンケートで明らかになったのは、任される仕事の中身に男女で違いがあり、女性のキャリア形成や昇進意欲に影響していること

▼意思決定の場にいるのが男性ばかりだと多様な視点がこぼれ落ち、「多様な市民にとって不利益」だと佐藤さんは言う。すべての人にとって生きやすい地域を実現するには、女性管理職を育てるべきだとも

▼管理職になりたがらない女性が多いのも事実だ。深夜に及ぶ残業は当たり前、議員や関係者との会合にもいつでも対応できる。そんな「管理職像」も変化を迫られている

▼県庁や市町村はきょう新規採用職員を迎える。志を抱いて入庁した人たちに、性別にかかわらずキャリアを積み重ねる機会を与えてほしい。それがより良い地域づくりにつながるはずだ。