関電原発の乾式貯蔵 容量増につながらないか(2024年3月29日『福井新聞』-「論説」)

 関西電力福井県内に立地する3原発の敷地内で、使用済み核燃料の乾式貯蔵施設設置に向けた準備を進めている。県の了承を受けて、15日には、高浜原発で2027年ごろの運用開始を目指す1カ所目の施設設置に向けた原子炉設置変更許可を原子力規制委員会に申請した。

 使用済み核燃料を輸送兼用の金属製容器「キャスク」に密封し、1基ずつ鉄筋コンクリート製の格納設備で覆う保管方式を採用する。3原発で計画する保管容量は計1530体(700トン)。高浜原発の1カ所目の審査状況を踏まえ、高浜2カ所目と大飯、美浜原発の施設を同時に規制委へ申請するとしている。27~30年ごろに順次設置し運用を始めたい考えという。

 空気の自然対流によって冷却する乾式貯蔵は、冷却用の水や電源を必要とする貯蔵プールより安全性が高いとされる。規制委も推奨し、東京電力福島第1原発や日本原電東海第2原発茨城県)で実績があり、四国電力伊方原発愛媛県)や九州電力玄海原発佐賀県)、中部電力浜岡原発静岡県)、東北電力女川原発宮城県)で計画が進められている。

 ただし関電は事情が異なる。施設内の乾式貯蔵は本来、貯蔵容量を増やすのが主な目的。一方、福井県は使用済み核燃料を県外に搬出するよう、四半世紀前から一貫して求めており、関電にとって乾式貯蔵の検討はご法度だった。このため昨年10月、関電が示した県外搬出に向けたロードマップに乾式貯蔵の設置検討が盛り込まれていたことは唐突感が否めず、「県の原子力政策の転換になるのではないか」との見方も出た。

 関電は、30年ごろに県外で操業開始する予定の中間貯蔵施設への円滑な搬出を目的とする。しかし、同施設の計画地点が決まっていない中、額面通りに受け取っていいのか。プールから乾式貯蔵施設に移送した後、プールの空いたスペースは使わない「貯蔵容量の制限」という約束を履行できるのか疑念が生じている。

 3原発の貯蔵プールは全容量の8割超が埋まり、4~5年程度で管理容量に達するか逼迫(ひっぱく)する。ロードマップでは、26年度から青森県の再処理工場に使用済み核燃料を運ぶ計画だが、工場の完成は26回延期されてきた。関電自身が「例外」に言及し、貯蔵容量の増加を完全には否定していないこともあり、乾式貯蔵は使用済み核燃料を県外搬出できない場合の備えとみられても仕方がないだろう。

 県がいう「安全性の考え方には合理性がある」との論拠だけで、関電による乾式貯蔵施設設置に県民理解を得られるのか、現状では強い疑問が残る。