人道危機が深刻化し、命を救うには一刻の猶予もない。イスラエルはパレスチナ自治区ガザ地区への攻撃を直ちに停止すべきだ。
国連安全保障理事会が即時停戦を求める決議を採択した。昨年10月7日にイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が始まって以来初めてである。
イスラム教の断食月ラマダンが終わる4月9日までに、双方が戦闘を停止し「持続的な停戦」につなげるよう求めている。
日本を含む非常任理事国10カ国が共同提案し、安保理メンバー15カ国のうち14カ国が賛成した。
特筆されるのは米国が拒否権を行使せず、棄権したことだ。イスラエルの自衛権を尊重する立場から、これまで停戦決議案に4度、拒否権を発動してきた。
日の出から日没まで飲食を断つラマダンは、イスラム教徒にとって宗教上特別な月であり、内外から停戦を求める声が出ていた。市民の犠牲が拡大しても、強硬姿勢を崩さないイスラエルに対し、米欧でも批判が強まっている。
イスラエルは、方針転換した米政府を非難した。両国は、ガザ最南部ラファの情勢を巡る協議をワシントンで開く予定だったが、ネタニヤフ政権は一時、代表団の派遣を見送る意向を表明した。
安保理決議に従うのは国連加盟国の義務だ。イスラエルは受け入れなければならない。
戦闘開始から5カ月半が過ぎた。ガザでは死者が3万2000人を超え、負傷者は7万人以上にのぼる。国連などによると、少なくとも人口の4分の1が「飢餓の一歩手前」にある。
栄養失調で子どもが死亡するケースも報告されている。燃料や水、医薬品が不足し多くの病院が機能不全に陥っている。
イスラエルが陸路での物資搬入を制限しているため、米欧は空や海から食料を提供している。だが、十分な効果は上がっていない。
ネタニヤフ氏は米国の忠告を無視してラファへの地上侵攻を実行する構えを崩さない。一方で、エジプトとカタールの仲介で停戦交渉が続いている。
今回の決議採択を恒久的な停戦につなげるため、米国はイスラエルにさらに圧力をかけなければならない。