犯罪被害者支援/信頼構築へ着実に実績を(2024年3月24日『神戸新聞』-「社説」)

 犯罪に遭った人やその家族らに見舞金を支給する新制度を盛り込んだ犯罪被害者等支援計画を、兵庫県が4月から導入する。昨年施行された犯罪被害者等支援条例に基づくもので、被害者遺族の声も踏まえて作られた。現実に即した支援に向け、内容の充実が欠かせない。

 兵庫県の支援条例は、全国47都道府県で43番目の成立だった。県内各市町の支援条例は、2022年までに全41市町で策定されており、県条例の制定をもって、ようやく県内すべての自治体で、犯罪被害者支援に特化した枠組みが整った。

 一方、春から始まる見舞金制度は、府県単位では関西初となる。殺人などの被害者遺族に30万円を、1カ月以上の治療が必要な被害者には10万円を支給する。用途制限はない。


 市町分を合わせ、多くのケースで死亡事例は60万円、傷害事例は20万円が支給される見込みだ。被害に遭った直後から、当事者は葬儀や医療費、転居費など突然の出費を迫られ、経済的な負担を強いられる。できるだけ迅速な支給を目指すべきだ。

 すでに県は、被害者らの不安や悩みを一元的に受け止める相談窓口を昨年10月に開いており、今年2月末までに63件の相談を受けた。運営を公益社団法人「ひょうご被害者支援センター」に委託し、県内どこからでも相談できる体制を整えている。

 期待される県の役割は、県警や市町と連携し、使いやすい制度にすることである。

 県に先駆けて条例を作った市町の中には、独自に用意した一時保育費負担や家事援助制度が全く利用されていなかった例もあった。被害から一定期間内などの利用制限がネックになっていたとみられる。

 被害者と自治体の支援をつなぐ調整役にとどまらず、県はこういった障壁をなくすよう自治体に促してもらいたい。

 また、個別の事情に応じて支援を届けるには、プライバシーに関わる部分を含めた関係機関の情報共有が不可欠だ。被害者から信頼を得るためにも着実に実績を積み上げる必要がある。

 心身共に傷ついた被害者に思いを寄せ、どの地域でも十分な支援が得られるよう施策に血肉を通わせることが重要だ。