災害関連死 県内も認定体制整備を(2024年2月27日『秋田魁新報』-「社説」)

 被災後の心身の負担が原因で亡くなる「災害関連死」について、県内では秋田市三種町を除く23市町村が認定に必要な「審査会」の設置規定を条例に明記していないことが、秋田魁新報社のアンケートで判明した。このままでは災害が発生した場合、認定作業が遅れる可能性がある。早急に対応できる体制を整えることが必要だ。

 災害関連死は避難生活の疲労や環境変化のストレスなどから体調が悪化して亡くなった事例を指し、自殺も含まれる。2011年の東日本大震災で約3800人に上った。16年の熊本地震では220人以上が該当し、全死者数の8割ほどを占めた。

 こうしたことを受け、19年8月に施行された改正災害弔慰金支給法で、審査会の設置を条例で定めるよう市町村に努力義務が課された。市町村は医師や弁護士らで構成する審査会を設置し、判定する必要がある。認定されると、遺族に最大500万円の災害弔慰金が支給される。ただ、認定の統一基準は設けられておらず、判断は市町村に委ねられている。

 秋田市は昨年7月の記録的大雨で甚大な被害を受け、これまでに被災後に亡くなった2人の遺族から、災害関連死に該当するのではないかと相談が寄せられた。このうち1人の遺族が8月に相談したところ、審査会設置の規定は市災害弔慰金支給条例に盛り込まれておらず、手続きを進められなかった。

 このため市は今月14日の市議会2月定例会初日に条例改正案を提出して可決され、相談から半年たってようやく審査会が開かれる見通しとなった。他の市町村でも、対応が後手に回ることがないようにしなければならない。

 アンケートは秋田市の例を踏まえて他の24市町村を対象に実施。条例に審査会の設置規定を設けていたのは三種町だけだった。町は災害弔慰金支給法改正を受け、19年9月に規定を設けていた。三種川氾濫による大雨被害に見舞われたことなどを受けた迅速な対応だ。

 アンケートによると、11市町が条例改正を検討しており、24年度中の施行を目指す動きも見られる。一方で、地元での委員確保の難しさを訴えたり、国や県に対し、ある程度の認定基準を示すよう求めたりする意見があった。

 能登半島地震でも災害関連死が疑われる例が相次いでいるが、石川県は関係市町だけで対応するのは困難だとして、審査会の合同開催や委員選定などで支援する方針だ。本県も市町村にどのようなサポートができるかを平時から想定しておくべきではないか。認定には遺族の申請が必要なため、制度の周知が欠かせない。

 災害関連死は適切な支援があれば防げるとされる。それぞれの事例にくむべき教訓があるはずであり、認定作業を通じ丁寧に検証することが大切だ。