【ヘルスリテラシー】健康長寿へ理解深めて(2024年3月21日『福島民報』-「論説」)

 高齢化社会が進展する中、国民の「ヘルスリテラシー」が高まっていないとの指摘が出ている。健康に関する情報を調べ、真偽を確かめた上で適切に意思決定する能力で、健康長寿の実現には一人一人が重要性を理解する必要がある。行政や関係機関による啓発も一層求められる。

 世界保健機関(WHO)は「健康を促進・維持し、利用するための個人の意欲や能力を決定する認知的・社会的能力」と定義している。こうしたリテラシーが高ければ、健康診断の結果などから身体の状態を把握して医師に的確な質問をする、情報を基に食事に注意する、運動を心がけるなど、自ら疾病予防につながる行動を取ることができる。リテラシーが低いと、誤った伝聞に振り回され、自身の健康課題を解決できないままに放置して状態を悪化させるリスクが増すとされる。

 聖路加国際大大学院看護学研究科の中山和弘教授は「日本人のヘルスリテラシーはEUやアジアの諸国と比べて高いとは言えない」と訴えている。病気になった時、身近に健康や病気の相談をできる場が十分に確保されていないことなどを要因の一つに挙げる。医師や薬剤師、臨床心理士などとのつながりを深め、普段から相談しやすく、正確で有効な医療情報を得られる環境を整えることも必要だろう。県内では医師や薬剤師の不足、地域偏在など課題は少なくないが、国、県は地域医療の整備を考える上で留意してもらいたい。

 生活習慣病の予防は、健康寿命の鍵を握る。2021(令和3)年度の国の統計によると、本県のメタボ率は19・2%で、都道府県別44位だった。食塩摂取量の多さが一因とされている。県は新年度、食に関わる企業・団体でつくる「県食育応援企業団」や市町村と一体で減塩やメタボ率改善に向けた新たな会議体を設ける。ヘルスリテラシーの重要性を県民に伝える取り組みも検討してほしい。

 日本一の長寿県を目標に、県は健康増進に向けた各種施策を進めている。行政に加え、企業でも健康経営を目指して労働環境の改善に取り組む動きが加速している。こうした流れをさらに強めるには、県民が自ら積極的に実践する意識づくりも欠かせない。(佐久間靖)

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