昭和100年式典 日本を挙げて開催したい(2024年4月29日『産経新聞』-「論説」)

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 昭和天皇の遺徳をしのび、激動の日々に思いをはせる機会になるだろう。
 昭和改元から100周年を迎える令和8年に、国の行事としての記念式典開催を目指す動きが国会内で活発になっている。超党派議員連盟が発足し、今年5月7日に設立総会を開くことになった。政府に式典実施の閣議決定を働きかける。
 国を挙げて、意義のある式典にしなければならない。政府は早期に開催を決定し、準備に取りかかってもらいたい。
 明治改元100周年にあたる昭和43年と150周年にあたる平成30年にも、政府主催の記念式典が挙行された。
 特に明治100年式典では、政府が2年以上も前から準備を進めた。東京・日本武道館で行われた式典には昭和天皇香淳皇后も臨席した。各都道府県や民間団体もさまざまな関連行事を行い、日本の近代化を実現した明治という時代に国民こぞって思いをはせた。
 
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 昭和100年式典も、国民一人一人が激動の時代をしのび、将来の国づくりに生かす場にすべきだろう。
昭和は元年(1926年)12月25日から64年1月7日まで62年余り続いた。日本の元号の中で最も長期に及ぶが、最初から苦難の連続だった。
 改元して間もない昭和4年に世界恐慌が起きた。その10年後には第二次世界大戦が勃発し、昭和16年12月、日本は英米などと開戦した。
 当初は有利に戦いを進めたものの、19年以降は米軍機による日本本土への空襲が激化した。20年8月にはソ連が参戦し、米軍が広島と長崎に原爆を投下した。政府・軍部も国民も本土決戦を覚悟したが、昭和天皇終戦の聖断を下し、大東亜戦争は終わった。
 戦後の日本は約7年もの長期にわたり連合国軍の占領下におかれた。27年に主権を回復し、高度経済成長を成し遂げた。
 戦争の荒廃を乗り越え、国民各層の力で復興・発展を果たしたのが昭和という時代だ。その歴史を顧みることは、現在の厳しい国際情勢と日本の役割を考える上でも大切である。
 4月29日は昭和天皇の誕生日にちなむ「昭和の日」だ。日本にとって激動の年月だった昭和をしのび、式典開催に向けた準備を進めていきたい。
 
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