自民党大会で首相が改憲に意欲 懸念は参院の「高い壁」 公明の対応が焦点(2024年3月17日『産経新聞』)

自民党大会で総裁演説を行う岸田文雄首相=17日午前、東京都港区(春名中撮影)

自民党は17日の党大会で採択した令和6年運動方針で、憲法改正に関し「年内の実現」を目指す考えを打ち出した。ただ、派閥の政治資金パーティー収入不記載事件で自民が支持を失う中、立憲民主党は抵抗の構えを強めている。連立を組む公明党も慎重姿勢を崩しておらず、改憲を「党是」に掲げる自民の本気度が改めて問われる1年となる。

「激動する国際社会に対応できるのは誰なのか。自公両党の安定した連立政権以外にはない。憲法観も安全保障観もバラバラの野党に任せるわけには絶対にいかない」。岸田文雄首相(自民総裁)は党大会でこう結束を訴えた。

首相は改憲にも意欲を示したが、現状は厳しい。昨年の通常国会では3月2日に衆院憲法審査会が開かれたが、今年は令和6年度予算案が通過しても実現していない。事件の説明不足を理由に立民が難色を示しているためで、自民重鎮は「他の委員会は動いている。政治資金問題は憲法とは別。早く打開策を見いだしたい」と嘆く。

憲法審には政局と離れて議論するという暗黙のルールがあり、事件を「人質」にとる野党第一党の振る舞いは日本維新の会や国民民主党の共感も得られていない。ただ、改憲を目指す両党はかねて憲法審開催に向けた自民の努力が不十分だと指摘してきた。維新幹部は「(事件で)脛に傷があるのか知らないが、自民がやるべきことをやらない限り、落ちた支持率は戻らない」と不満を口にする。

参院憲法審における議論の遅れも懸念材料だ。自民関係者は「改憲政党に勢いがある衆院憲法審の議論は煮詰まっているが、参院はスカスカだ」と語る。

参院側で立民は護憲色が濃い辻元清美氏を野党筆頭幹事に据えるなど徹底抗戦の構えだ。自民も新たに佐藤正久氏を与党筆頭幹事に起用するが、事件が直撃した安倍派のメンバーを国会の要職から外した余波で兼務を余儀なくされており、憲法に集中できない可能性が高い。参院自民のベテラン議員は「辻元氏は弱り目の自民の足元を見ている。(状況を変え得る)衆院選が終わらないと憲法は動かない」と述べた。

改憲で公明の後押しを得られる保証もない。自民党大会に来賓として招かれた山口那津男代表は「先送りできない優先課題を差し置いて憲法に力を注ぐ状況ではない」との立場だ。自民幹部は参院が主戦場になると指摘した上で、「参院議員で改憲に慎重な山口氏が壁になる」と語る。

野党と同様、自公の憲法観も一致しているとはいえず、与党の足並みがそろうのかが憲法改正の最大の焦点となる。(内藤慎二)