戦闘機輸出解禁に関する社説・コラム(2024年3月15日)

戦闘機輸出解禁 平和国家の理念損なう(2024年3月15日『東京新聞』-「社説」)

 

 政府が英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機=イメージ、防衛省提供=の第三国への輸出を解禁する。戦闘機は殺傷能力が高く、国際紛争を助長するとして輸出を禁じてきた平和国家の理念と価値を損なう。再考を求める。
 政府は2022年、次期戦闘機を英伊両国と共同開発することを決定。当初は第三国輸出を前提としていなかったが、英伊から調達コストの削減を求められて方針を転換。輸出を認めるかどうか与党内で調整が続いていた。
 公明党は戦闘機の第三国輸出に慎重だったが、政府が共同開発した武器輸出に関し(1)次期戦闘機に限定(2)戦闘が行われている国は対象とせず、防衛装備品・技術移転協定を締結した国に限る(3)個別案件ごとに閣議決定する-との条件を提示したため、容認に転じた。
 自公は15日にも輸出解禁に大筋合意する。政府は近く防衛装備移転三原則の運用指針改定を閣議決定し、35年までの配備を目指す。
 ただ、政府が示した条件が「歯止め」になるとは言い難い。
 移転協定を結んで輸出後の使い方や再移転を制限しても、他国に渡った兵器の行方を監視することはできず、国際法に反する武力行使に使われる懸念は残る。英国など4カ国が共同開発した戦闘機ユーロファイターが第三国のサウジアラビアに輸出され、イエメン内戦で空爆に使われた例もある。
 次期戦闘機の輸出を個別案件ごとに閣議決定するにせよ、政権内の手順に過ぎない。憲法の平和主義に関わる基本政策の転換を、国会での審議を経ず、政府与党だけで決めることなど許されない。
 そもそも取得費用を抑制するために輸出が必要なら、別の武器を他国と共同開発する場合も輸出が避けられない理屈になる。
 残念なことは公明党が結局、連立維持を優先させ、戦闘機輸出で妥協したことだ。「平和の党」の理念はどこへ行ったのか。
 戦後日本は、専守防衛や武器禁輸など「平和国家としての道」を歩み、国際的な信頼を得てきた。その外交資源を安易に捨て去っていいのか。国会はもとより国民的な議論を尽くさねばなるまい。

(2024年3月15日『しんぶん赤旗』-「潮流」)

 

 ギリシャ神話に出てくる時間の神が名前の由来です。打ち上げ直後に爆発した民間ロケットの「カイロス」。世界最短の宇宙輸送をめざすスペースワンが開発を進めてきました

▼競争が苛烈な宇宙の場は、陸海空につづく第四の戦場とも呼ばれています。キヤノン電子などが共同出資するスペースワン防衛省と契約。今回のロケットには、政府の軍事スパイ衛星を代替するための小型衛星を搭載していました

▼宇宙軍拡にも前のめりの岸田政権。国会で決議され、平和利用にかぎって認められてきた日本の宇宙政策を根本からひっくり返そうとしています。さらなる軍事大国の道。それは武器の輸入だけでなく、輸出でも

▼日本がイギリス、イタリアと共同開発する次期戦闘機や武器輸出の解禁。この国の重大な転換をめぐり、共産党の山添議員が首相の姿勢を国会でただしました。「海外へ武器を売りさばくという発想は『死の商人』国家との批判を免れない」

▼武器輸出の禁止は日本が国是としてきました。外務省の「平和国家としての60年の歩み」の実績にも、武器の供給源とならず武器の売買で利益を得ないことが記されています。専守防衛や軍事費のGNP(国民総生産)1%枠などとともに

▼戦後、国民の願いに押されるように掲げてきた平和国家。その実績を、ことごとく壊していく政権の背景には米国や財界のいいなりになっている自民党政治があります。軍事力で平和は築けない。時間を逆戻りさせないためにも、その転換こそ。