次期戦闘機の輸出(2024年3月20日『宮崎日日新聞』-「社説」)

◆なし崩しの対象拡大を危惧◆

 自民、公明両党は英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機に関し、日本から第三国への輸出を認めることで合意した。

 政府、自民党は共同開発する武器の第三国への輸出を全面解禁するよう主張したが、公明党が反対。今回は次期戦闘機に限定し、輸出先は「防衛装備品・技術移転協定」を結んでいる国に限った上で、輸出先ごとに与党協議を経て閣議決定する手続きを踏むことで折り合った。

 岸田文雄首相は国会で「手続きの厳格化で、平和国家としての理念を堅持することを明確な形で示す」と強調した。だが、この手続きは与党内だけで完結し、国会の関与は担保されていない。武器輸出の大幅な拡大に慎重姿勢を示した公明党に配慮した形だが、これがありの一穴となって輸出対象がなし崩しに拡大していくのではないか。危惧せざるを得ない。

 政府は昨年末に防衛装備品の輸出ルールを定めた移転三原則とその運用指針を改定し、外国企業のライセンス(許可)に基づいて生産した完成品について、ライセンス元への輸出を認めるなど規制を緩和した。武器輸出国への変質だ。

 国際秩序が不安定さを増す中で、日本は平和国家としてどういう外交・安保政策をとるのか。国会で真正面からしっかりと議論すべきだ。

 次期戦闘機を含む国際共同開発の武器輸出に関しては、昨年7月に自公の実務者がまとめた論点整理では「移転できるようにすべきだとの意見が大宗(大勢)を占めた」と容認する方向だった。ただ、その後、公明党が「歯止めが必要だ」と主張し、先送りされた。

 公明党の指摘は、2022年に次期戦闘機の共同開発を決めた際には第三国輸出が想定されていなかった点だ。岸田首相は「決定後に協議を進める中で、日本にも第三国輸出を求めていることが明らかになった」と説明。しかし、共同開発の交渉段階で当然、議題になっていたはずだ。詰めを怠ったとすれば政府の失策であり、意図的に隠したならば国民への背信行為だ。

 公明党議員は国会質疑で「戦闘機の輸出先で紛争に使われれば、地域の安定を失い、日本を取り巻く安全保障環境が損なわれるのではないか」「相手国の政権が代われば運用の適正管理が不可能になるのではないか」との懸念を示した。その通りだ。では今回の決定でその懸念は払拭できるのか。自公協議は結論ありきではなかったのか。

 戦闘機という極めて殺傷能力の高い武器の輸出を認めれば、ほかの武器の第三国輸出のハードルは下がるのが現実だろう。日本の安保政策上、本当に必要か。真(しん)摯(し)な議論を求めたい。