日本が英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機を巡り、自民・公明両党が月内にも第三国への輸出を認める方向となった。
岸田文雄首相が国会で「日本の防衛に支障を来さないようにするには英伊と同等の立場が必要」などと答弁したのを公明が評価。慎重姿勢を転じた。
他国と共同開発する兵器を日本が輸出するのは当面、次期戦闘機に限るという。
公明は輸出先を(1)日本と協定を交わした国に絞り(2)紛争当事国は除外(3)契約前に与党に諮る―といった歯止め策を求めている。
自公は昨年の実務者協議で「防衛装備移転三原則」の運用指針を大幅に見直した。
非戦闘の救難、輸送、警戒、監視、掃海の5分野で殺傷兵器を搭載していても装備品の輸出は可能とした。他国企業の許可を得て日本企業が造る兵器の完成品は、いずれの開発元の国にも輸出できるよう改めている。
相手国が国民の制圧に用いる目的外使用を捕捉できず、第三国へと渡る…。紛争を助長する恐れは格段に高まった。
戦闘機は殺傷兵器の最たるものだ。相手国の意思に日本の方針が通用する十全な歯止め策などあろうはずもない。
武器輸出は、安倍晋三政権が40年ほど続いた禁輸政策を破ることで道筋を付けた。当時、経団連も全面的な解禁を要請し、政権の背を押した経緯がある。
その後も政府は防衛産業の再興と称し、生産基盤強化を国費で賄う法律を設けた。膨大な助成金と基金で研究開発を支え、アジア諸国の軍隊に直接、装備品を供与する制度の運用も始めている。
5年間で総額43兆円の防衛費を確保したことで、防衛省から受注する重工業や電機メーカーは活況を呈しつつある。その筆頭格の三菱重工は毎年、3300万円を自民党に献金している。
公明は昨年来、どの程度輸出を認めるかに議論を狭め、兵器を売って稼ぐ“成長戦略”の是非を自民にただすことはなかった。
今回も「国民の理解を得られていない」と言っていながら、次期戦闘機に触れただけの首相答弁を可とした。示し合わせたかのように姿勢を変えている。
利益のため戦争・紛争を求めるのが軍需産業だ。曲がりなりにも経済やインフラ支援で外交を築いてきた戦後日本の変質を世界に知らしめることにもなる。
この流れを止め得るのは、もはや有権者をおいてほかにない。