◆公明・西田氏「紛争を助長して地域の安定を失う恐れがある」
参院予算委で挙手する岸田首相(千葉一成撮影)
公明の西田実仁参院会長は予算委で、2022年に3カ国で共同開発を決めた時は輸出が前提でなかったにもかかわらず、なぜ輸出容認の方針に転換したのかをただした。
首相は「技術や資金面で貢献しようと考えていたが、(英国、イタリアと)協議を進める中で、完成品の第三国移転推進をわが国にも求めていることが明らかになった」と説明。レーダーに探知されにくいステルス性能などを重視した戦闘機を製造するために「日本が直接輸出できる仕組みを持ち、英伊と同等に貢献しうる立場を確保することが国益になると考えた」との見解を示した。
第三国が日本から輸入した次期戦闘機で武力行使に及んだ場合には、憲法の平和主義を逸脱し、日本が海外の紛争に関与することにつながる。西田氏は「紛争を助長して地域の安定を失う恐れがある。引き続き議論が必要だ」とくぎを刺した。
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◆次期戦闘機を第三国に輸出することが、日本の国益に合うのか
【柳沢協二さんのウオッチ安全保障】
岸田文雄首相は、日本防衛に必要な性能を満たした次期戦闘機を造るためには、英国やイタリアの顔を立てなければならず、だから日本も第三国輸出を解禁しなければならないと説明するが、論理的に結び付かない。日本のニーズを満たす戦闘機を造るための議論は英伊両国と詰めればよいだけで、輸出解禁の説明としては不十分だ。
岸田文雄首相は、日本防衛に必要な性能を満たした次期戦闘機を造るためには、英国やイタリアの顔を立てなければならず、だから日本も第三国輸出を解禁しなければならないと説明するが、論理的に結び付かない。日本のニーズを満たす戦闘機を造るための議論は英伊両国と詰めればよいだけで、輸出解禁の説明としては不十分だ。
首相の説明だと、日本に必要な性能が英国にとっては不要なのかどうかはっきりせず、3カ国でどこが折り合いが付かないのかチェックしなければ善しあしを判断できない。中身の議論が全くできておらず、期限ありきで話を進めているという印象すら受ける。
問われているのは、日本の外交上の国益とは何かだ。紛争を助長しないだけでなく、紛争を解決するために具体的に何をしなければいけないのか。そのために日本はどういう国であるべきか。もっと議論を詰めないといけない。武器輸出を巡る議論を専門にやっていく特別委員会をつくるぐらい、国会も関与しないといけない。
次期戦闘機を第三国に輸出することが、日本の国益に合うのか。武器を売らない選択もあれば、片一方の相手国だけに加担しないという選択もある。大事なことは、日本の立場でどれだけ意見を言えるかだ。紛争を助長しないという日本の国益をもっと声高に、断固として主張しなければならない問題だと思う。
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次期戦闘機 日本、英国、イタリアが2022年12月、共同開発に合意した新たな戦闘機のこと。開発計画は「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)」と呼ばれ、35年度までの完了と配備開始を目指す。共同開発は3カ国の技術を結集し、コストやリスクを減らすのが狙い。日本の航空自衛隊はF2戦闘機、英国とイタリアはユーロファイターの後継と位置付ける。防衛省は、無人機と連携したネットワーク戦闘や高性能なセンサーの搭載、ステルス性の重視などを主な特徴に挙げている。