週明けの国会は、自民党の派閥裏金事件を巡る与野党の攻防が続きそうだ。
岸田文雄首相(自民総裁)は政治資金規正法改正の与野党協議を速やかに始めたい考えだが、与党案の条文化について自民、公明両党の方針が定まらない。野党は衆参両院の政治倫理審査会で「裏金」議員の弁明を求め、攻勢を強める方針だ。
「早期の法案提出に向け、自民党として条文化に全力を挙げ、公明党に示す」。首相は10日、首相官邸で記者団にこう強調した。だが、公明の山口那津男代表は11日、訪問先の熊本県益城町で「与党合意には直ちに法案にできない部分がある。与野党で協議を進めるのが大事だ」と語った。
自公は9日、与党案の概要について「大筋合意」に至ったが、政治資金パーティー券購入者の具体的な公開基準額など重要な論点が積み残しとなった。強い規制に消極的な自民と、世論の批判を意識する公明の溝が表面化し、条文に落とし込む作業は難航必至だ。
特に公明側に慎重論が強い。共同提出すれば、自民と共に野党の攻撃にさらされることになるからだ。公明のこうした姿勢を受け、自民の茂木敏充幹事長は10日の党会合で「法案化の作業を進め、同時に与野党協議を行う」と語った。自民内には日本維新の会を交えた3党共同提出案もある。
これに対し、立民の泉健太代表は10日の記者会見で、与党案について「裏金が根絶される中身ではない」と非難。立民は「与党の対応が決まらなければ協議できない」(国対幹部)との立場だ。改正案の審議は衆院政治改革特別委員会で始まる予定だが、日程は決まっていない。
野党側は政治改革に関する首相の姿勢をただすため、衆院予算委員会の集中審議を求めることも検討している。
裏金事件の真相究明も継続する。衆院政倫審では14日、野党が先に申し立てた安倍派と二階派の44人に対する審査を行うことを議決する。対象者からは弁明に消極的な声が出ており、自民に対する批判が一層高まる可能性がある。立民幹部は「政倫審が週明けの見せ場だ」と意気込む。
さらに、伊藤信太郎環境相と水俣病被害者団体の懇談で環境省職員が発言を遮った問題が、新たなテーマとして浮上した。野党は13日、同省などへのヒアリングを実施。世論の反応を見ながら伊藤氏の責任追及を強める構えだ。
自民、裏金再発防止の意義強調 与党の規正法改正案 野党は実効性疑問視(2024年5月12日『産経新聞』)
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた政治資金規正法改正を巡り、与野党の実務者らが12日、NHK番組で議論した。自民の鈴木馨祐氏は、公明党と大筋合意した与党案は事件の再発防止につながる内容だと意義を強調。立憲民主党の落合貴之氏は、企業・団体献金の扱いに言及しなかった点などを念頭に、与党案には「抜け道がある」と指摘し、実効性に疑問を呈した。
安倍派と二階派は長年、パーティー券の販売ノルマ超過利益を政治資金収支報告書に記載せず、議員側に還流していた。鈴木氏は「反省に立ち、再発防止を徹底するのが一番大事だ」と述べた。落合氏は「個人献金を促進していくことが重要だ」と主張した。