厚生労働省は従業員301人以上の企業に勤める女性の平均賃金が男性の69・5%にとどまるとの集計結果を公表した。女性活躍推進法に基づいて2022年7月、男女の賃金格差の開示を企業に義務付け、初めて結果をまとめた。「女性活躍の推進」は12年発足の第2次安倍政権以降、国の労働政策の柱であり、情報開示をてこに賃金格差縮小へ確実につなげていかねばならない。
開示義務対象となる301人以上の1万7370社のうち、1月19日時点で厚労省が開設している「女性の活躍推進企業データベース」などで公表している1万4577社の情報をまとめた。開示義務に違反しても罰則はなく、2793社では情報開示をしなかった。
そもそも賃金格差の公表に前向きな企業は多くない。女性の賃金が低いことがイメージダウンになると考え、公表せずに様子見する企業も少なくない。厚労省は、違反した社に対しては開示の意向確認や指導を進めていく方針だ。
経済協力開発機構(OECD)の調査によると、イタリア、フランス、ドイツ、英国など欧州の主な国では、女性の賃金は男性の9割程度なのに対し、日本は77・9%にとどまる。先進7カ国(G7)だけをみると、日本が最も男女の格差が大きい。
政府の22年版男女共同参画白書によると、日本の女性の非正規雇用比率は53・6%で、男性の21・8%を大きく上回る。結果、正規雇用の高給ポジションに男性が多くなり、企業の部長級管理職に占める女性の割合は7・7%にとどまる。
世界経済フォーラムが23年に発表した男女格差を表すジェンダー・ギャップ指数で、日本は調査対象の146カ国中125位だった。政治や経済の分野が足を大きく引っ張り、過去最低に沈んだ。世界は男女格差解消に向かっているのに置いてけぼりになった格好で、これ以上後れを取ることは許されない。
格差の背景には、根強い男女の役割分担や長時間労働といった慣習がある。長時間労働の是正や男性の育児休業取得の促進を推進するなど、働き方、暮らし方を根本的に見直すことが不可欠になる。
厚労省は、女性が出産や育児を経ても働き続けられる環境の整備や、女性の管理職登用を進め、格差是正を図りたいとするが、企業側も意識を大きく転換させるべきだ。性差に関わりなく活躍できる職場だと示すことで、企業評価の向上にもつながるはず。情報開示を前向きにとらえたい。