今月1日の水俣病犠牲者の追悼慰霊式のあとの懇談の場で、患者団体などのメンバーの発言の途中で環境省の職員がマイクの音を切った問題について、伊藤環境大臣は9日、岸田総理大臣から環境省の対応は不適切だったとして、再発防止の徹底などの指示を受けたことを明らかにしました。
今月1日、水俣病の犠牲者を追悼する慰霊式のあとの環境大臣と患者や被害者などの団体の代表との懇談の場で、環境省の職員が団体のメンバーが発言している途中にマイクを切ったことが不適切な対応だったとして、伊藤大臣は8日水俣市を再び訪れ、謝罪しました。
この問題の経緯について、伊藤大臣は9日、総理大臣官邸で岸田総理大臣に報告しました。
報告後に取材に応じた伊藤大臣は、岸田総理大臣から今回の環境省の対応は関係者を不快にさせるものであり、再発防止を徹底すること、懇談を開催する際は丁寧に意見を聞ける運営方法を検討すること、そして水俣病対策の推進は環境行政の重要な柱であり、関係者に寄り添った対応をするよう指示を受けたことを明らかにしました。
環境省は、今回の問題を受けて改めて水俣病の患者団体などと伊藤大臣との懇談の場を設けるとして、時期や運営方法の調整を進めています。
岸田首相「職責をしっかり果たしてもらいたい」
岸田総理大臣は参議院内閣委員会で「環境省の対応は関係者を不快な思いにさせる不適切な対応だったと強く認識している。伊藤環境大臣からは、昨晩、再び現地に足を運び、謝罪を行ったことなどについて先ほど報告を受けた」と述べました。
その上で伊藤大臣に対し二度とないよう厳重に注意することや、関係団体からの要望を踏まえ懇談の場を再度開催する方向で調整し、丁寧に意見を聴けるよう運営のしかたを検討すること、先頭に立って関係者に寄り添った対応を行い、水俣病対策を進めるよう、指示したことを明らかにしました。
一方、伊藤大臣の責任について問われたのに対し「懇談の場での状況についてさまざまな指摘があるが、その状況も踏まえた上で私として3点の指示をした。この指示を含め、職責をしっかり果たしてもらいたい」と述べました。
また、みずから関係者と面会する考えがあるかを問われ「水俣病への対応は環境行政の原点だということを踏まえ、被害者に寄り添った対応を行っていかなければならない。具体的には懇談の場をやり直した上で環境大臣ともしっかり協議しながら対応を考えていく」と述べました。
官房長官“伊藤大臣 責任を果たしてもらいたい”
「水俣病不知火患者会」“被害者を愚弄 救済に向け話し合いを”
立憲民主党は、環境省の職員が水俣病の患者団体などとの懇談の場で、参加者の発言中にマイクの音を切った問題を受けて国会内で会合を開きました。
会合には、懇談の場にいた環境省の担当者も出席し、当日の状況について聴き取りを行いました。
また、懇談に出席した「水俣病不知火患者会」の岩崎明男会長もオンラインで参加し「国のやり方が、私たち被害者を愚弄していることがはっきりした。大臣が職員を制止しなかったことは許されない。人間の血が流れておらず、このような態度は一生、忘れない。国会議員の皆さんには、救済に向けて、話し合いを進めてもらいたい」と訴えました。
水俣マイク音切り 立民 長妻政調会長“環境省は対応見直しを”(2024年5月9日『NHKニュース』)
水俣病の患者団体などとの懇談の場で、環境省の職員が参加者の発言中にマイクの音を切った問題について、立憲民主党の長妻政務調査会長は、環境省は冷たい対応に終始しているとして対応を根本的に見直すよう求めました。
今月1日に熊本県水俣市で開かれた水俣病の患者団体などと伊藤環境大臣との懇談の場で、団体のメンバーの発言の途中に、環境省の職員がマイクの音を切り、伊藤大臣は8日現地で団体の代表らに謝罪しました。
これについて立憲民主党の長妻政務調査会長は9日の記者会見で「水俣病は公害の原点と言われ、いわゆる『公害国会』で議論され、政治判断で当時の環境庁を作ろうとなった。それを本当に知っているのか疑わしい。アリバイ的に話を聞く儀式だったと指摘されてもしかたない」と述べました。
そのうえで「今月1日に懇談が行われ、大型連休明けの7日までなぜほったらかしにしていたのか。環境省は冷たい対応に終始しており、対応を本気で見直してもらいたい」と求めました。
一方、伊藤大臣の進退については「きのう伊藤大臣は『私の能力のかぎり、要望に応えられるよう努力していきたい』と述べた。これを信じるのであれば患者の認定などが進むと思うので、今後の対応を注視したい」と述べました。