「お金で解決できる問題はない」という。金融教育家の田内学さんの著書「きみのお金は誰のため」に、そんな一節があった。禅問答のような文句に戸惑ったが、お金の役割に目を開かされる
▼「お金を使うとき、受け取ってくれる人がいる。その人が働いてくれるから問題は解決する」。例えば空腹を満たすご飯を食べるとき。茶わんに盛られるまでには農家がいて、流通業者がいて、お店で販売する人がいる。一杯のご飯のため多くの人が働いている
▼人々がお金を受け取って働き、いろいろな問題を解決しながら社会はうまく回っている。ところが人は順番を勘違いし「お金の魔力に取りつかれてしまう」という
▼魔力に魅入られた人物が国民の代表とは情けない。「裏金」という妙なお金をつくっていた。衆院政治倫理審査会で議員らはそのお金の「会計に関与してない」「私が自由に使っていたという事実もない」と話す
▼お金の使い道に無頓着なのは働く人の姿が視野にないからなのか。その口で増税と言われても、大方の人は働く意欲を失う。