日経平均株価が初めて4万円の大台を突破した。つい先日、過去最高値を更新したばかりで、息つく間もないスピード上昇だ。過熱感を警戒しながらも、株高を定着、さらには上昇させ、実体経済の成長へといかにつなげていくか。日本経済の新たなステージへと向かうきっかけとしたい。
これまでの急激な株高は、堅調な大企業業績や、上場企業に企業価値向上策を求める東京証券取引所の動きなどが評価され、海外投資家の買いを呼んだ一面がある。一方で、米株高や円安、中国経済の停滞による日本市場の再評価など外的要因も少なくない。相場を大台へとけん引したのは、生成人工知能(AI)の需要を見込んだ半導体株の値上がりだ。米市場の上昇を受け、一気に4万円台に乗った。
県内の証券会社はここ最近の株高で熱気を帯びている。顧客からの問い合わせが相次ぎ、NISAを中心とする株式セミナーでも連日多くの参加者でにぎわっているという。県内でも貯蓄から投資へと資産の移行が徐々に進んでいる状況とみるべきだろう。
今後の株価の動向について国内外の証券会社アナリストらの意見は、多くは強気の傾向にあるようだ。4万円はまだ通過点でドル建てで見れば日本株は割安にある、バブル期と違い企業業績の裏付けがあり半導体関連でもそれほどの割高感はないなど、当面は上昇余地があると論ずる声が目立つ。
ただ、産業全体で見ると、業績が堅調な企業ばかりではない。民間調査会社が発表した2023年の企業倒産は前年比35%増の8690件となり、4年ぶりに8千件を超えた。増加は2年連続で、増加率はバブル崩壊後の1992年以来の高さだった。また、最近になって大手でも人員削減に動く企業が増え始めている。
株高を背景に、いかに日本経済を成長させ、国民の生活を向上させるかが求められる。現在の株高による資産効果は少なからず経済を好転させる力を持つはずだ。物価高騰を感じさせない賃上げを行い、持続的な好循環へとつなげることが重要だ。既に県内の大手企業なども今春闘での賃上げを表明している。こうした動きを中小企業などに波及できるかが焦点となる。
同時並行的に、成長産業への労働移動の円滑化、人口減対策や成長分野に向けた投資なども欠かせない。実体経済と株式市場がしっかりとした成長軌道に移るために企業と行政は知恵を絞りたい。