妻のキャリアを理解、子どもと過ごしたい 夫の転職が増加傾向「夫婦で長く働く」を模索(2024年3月7日)

 

 

 

  

■妻ではなく夫が転職

 そんな現状を打破するためには、やはり男性の意識と働き方を変えなければならないだろう。

「妻ではなく、夫が職業を変える選択をする事例が増えてきています。いつも何かを犠牲にするのは女性だった社会が、少しずつですが変化しているのを感じます」

 と話すのは、人材紹介事業・DEIコンサルティング事業を提供するXTalent(東京都港区)の大野綾事業部長だ。同社では「キャリアと家庭をトレードオフしない働き方を提案したい」と19年からワーキングペアレンツの転職サービス「withwork」を展開しているが、ここ数年、特に男性側からの転職相談が増えているという。

 東京都練馬区の会社員の男性(39)もその一人。今年1月、それまで勤めていたメーカーからIT関連会社に転職した。ITデザイナーとして働く妻(34)が2人目の出産を経て、復職した頃から考えていたことだという。

「以前の職場では管理職で、夕方以降にもどんどん会議が入ってきました。子どもたちを保育園に送っていったり、間に合えば夕飯の準備をしたり、できる範囲でやってはいましたが、妻も働いているので、毎日が大変でした」(男性)

サステナブルに働く

 男性は結婚する前から、仕事の話を理解しあえる妻の存在が支えだったという。その妻が昨秋、より幅広い仕事にチャレンジできる職場に転職。キャリアを積むことに積極的な姿を見て、男性はこう思ったという。

「妻は、今の仕事が好きだから、そのまま楽しく働いていてほしい。でも、子どもたちが大きくなるまでずっと今の生活ができるんだろうか、と。子どもたちともっと一緒に過ごしたいと思いましたし、何より夫婦ともに長く働いていける環境のために、僕自身が転職する選択をしました」

 男性の中にも、会社に全てを捧げるのではなく、プライベートを充実させたいという価値観を持つ人は確実に増えている。不透明な経済状況の中、男性ばかりが家計を背負うことに居心地の悪さを感じる人もいるだろう。愛知県内の住宅メーカーで働く管理職の女性(45)は、

「いま、男性が家事・育児をしやすい体制をつくる絶好の機会だと思います。先日ある大手企業の人事部長と話す機会があり、やたらと『女性が生き生きと働いていて、家事育児も両立しやすい職場です』とアピールされましたが、今やるべきは、男性のほうでしょって」

 と話す。

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