「もう一度、上告審で問いたい」 福島・猪苗代ボート事故、逆転無罪判決に遺族ぼう然(2024年12月17日『福島民友新聞』)

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佐藤被告に無罪が言い渡された法廷=16日午後、仙台高裁(代表撮影)
 「原判決を破棄し、被告人は無罪とする」。福島県会津若松市猪苗代湖(いなわしろこ)で2020年9月、航行するプレジャーボートで巻き込み、3人を死傷させたとして業務上過失致死傷罪に問われた佐藤剛被告(47)の控訴審判決で、渡辺英敬裁判長は後回しにした主文でこう述べた。過失を認定できないとし、刑事裁判の大原則「疑わしきは罰せず」の理論を踏襲した。遺族は代理人弁護士を通じ、「判決は到底納得できない」とのコメントを出した。
 死亡した豊田瑛大(えいた)さん=当時(8)=の遺族は被害者参加制度を利用し、直接裁判の行方を見守ってきた。佐藤被告に無罪が言い渡されると母親は一点を見つめたまま動かず、父親はかけていた眼鏡を机にたたき付け、天井を見上げた。
 控訴審では代理人を通じて「4年間瑛大や被告のことが頭を離れず、瑛大との思い出は振り返られていない」と意見陳述もした。判決後、代理人弁護士を通じて出された遺族のコメントでは「生命を奪われて一生、背負う重大な傷害を負わされたのに、無罪とはこの国の司法制度が本当に機能しているのかもう一度問いたいので、上告審での審理を強く求めます」とつづった。
仙台高検「内容検討」
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 仙台高検の吉川崇次席検事は「判決の内容を検討の上、適切に対応したい」とコメントを発表した。
被告側「県警の捜査ずさん」
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閉廷後、取材に応じる被告弁護人
 渡辺裁判長は冒頭、「理由から先に述べます」とし、約80分にわたり過失が認定できない理由を説明した。佐藤被告はこの日、上下黒のスーツで出廷。裁判長の方に体を向け、目線を落としながら理由の要旨を聞いていた。無罪が言い渡された際も表情を変える様子はなかった。
 閉廷後、被告側代理人の吉野弦太弁護士は報道陣の取材に応じ、「科学的根拠や事実認定に基づいたわれわれの多くの主張が認められた。本来一審で認められるべきだった」と述べた。
 また吉野弁護士は「県警の捜査はずさんで不合理な証拠を作出した」とし、一審の裁判官らに対しては「正義を発見する意欲が感じられない刑事司法にがくぜんとしている」とのコメントを発表。佐藤被告は「本日、無罪の判決をいただきました。私は、当時、十分な針路の安全確認を行っていました。このたびの控訴審判決は、その点を確かな証拠に基づいてお認めくださったものと理解しています」との談話を出した。


猪苗代ボート事故、被告に逆転無罪 控訴審判決、操縦「過失認定できず」(2024年12月17日『福島民友新聞』)
 
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 会津若松市猪苗代湖で2020年9月、航行するプレジャーボートで3人を巻き込み死傷させたとして、業務上過失致死傷罪に問われたいわき市の元会社役員佐藤剛被告(47)の控訴審判決公判が16日、仙台高裁で開かれた。渡辺英敬裁判長は「被告の過失を認定することはできない」として禁錮2年とした一審福島地裁判決を破棄、逆転無罪を言い渡した。
 判決理由で渡辺裁判長は、一審判決で「被害者を視認することができた」と県警の実況見分を基にした事実認定について言及。「湖面に浮く人の認識には周辺の対象物や日照条件などが極めて重要で、着衣や頭髪の色などで認識可能な距離には変化が生じる」とした上で、見分はマネキンの頭部が水上に浮いているなど「(事故時と)視認条件が異なる」と指摘、「約223メートル先から被害者を発見できたとする一審判決の判断は認められない」とした。
 また、事故が起きた遊泳禁止区域で動かず浮いている人を予見するのは「相当に困難と言わざるを得ない」と認定。船は加速すると船首が上向き死角に入る特性を踏まえても「被告の航路選択や操縦に不適切な事案があったとは言えない」とも指摘、仮に被害者が死角に入ったことで発見できなくても「被告に何ら注意義務違反があるとは言えず、死角に入るまでに被害者を確実に発見できたと認めることは困難で、事故を回避できたとは言えない」として「過失を認めるには合理的な疑いが残り、犯罪の証明がない」と結論付けた。
 佐藤被告は20年9月6日午前11時ごろ、猪苗代湖プレジャーボートを操縦し、千葉県野田市の豊田瑛大(えいた)さん=当時(8)=を死亡させ、母親ら2人に重傷を負わせたとして、21年10月に起訴された。
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