そろそろ退職が近づいてきた、という時に誰もが考える道は2つ。思い切って早期退職をするか、定年後も会社に残って働くか、という選択肢です。
退職は人生の大きな区切りであり、新しい人生の門出。単に最終地点ではないのです。どのように新しい人生を始めるのかは、段階的な、用意周到な計画が必要になってきます。
そこで今回は、米国カリフォルニア州立大学・心理学部教授のケネス・S・シュルツ氏監修の『リタイアの心理学 定年の後をしあわせに生きる』(日経ナショナル ジオグラフィック社)を参考に、早期退職か、定年後も働くかという究極の二択について、考えておくべきことをご紹介します。
■1:早期に退職する――向いている人、いない人
定年の年齢は国ごとに異なりますが、2012年の国際調査では前倒しで退職する人が多い傾向にあったそうです。 早期退職に向いている人は、経済的に問題がなく、次にやりたいことがはっきりしている人。そういう人にとっては早めに退職することで、より人生が充実するでしょう。 ただ自発的に早期退職を申し出た場合、年金や退職金にどんな影響が出るのか早めに計算しておく必要があります。また早期退職を歓迎しない会社には、自分が辞めれば会社の利益になることを説得しなければならないでしょう。 早期退職する場合、心理的な側面を外して考えることもできないでしょう。2010年に米ミシガン大学が行った研究によると、60代初めに引退した人は認知機能が低下しやすいといいます。 頭を使うのはもっぱら仕事のときで、人付き合いは同僚だけ、という人は、引退によって知的な刺激が激減する恐れがあります。こういう人は引退後に平板な生活にならないよう、心がけましょう。
■2:退職せずに働き続ける――創造性のアピールが鍵
今の仕事に不満がなければ、退職延期も選択肢に入ります。仕事が面白くてまだやめたくない、貯金を増やすためにもう少し働きたいという人は、定年後も現役を続けたいと思うでしょう。 現実的には退職を延期する場合、今の仕事の物理的な負担を減らすなどきつい作業から外れる工夫が必要です。体力やスタミナを消耗する仕事より、終日会社内にいて、管理的な仕事をこなす方が続けやすいからです。 働き続けたいという自分の意思を尊重できるのが理想ですが、社会的な制約もあります。年をとっても働く人が評価される社会なのか、若いエネルギーがもてはやされる文化なのかによっても状況は異なります。 客観的に見て、高齢者に対する「負」のイメージは、想像力に欠け、自分のやり方に固執することにあります。高齢になっても働く価値があると認めさせるには、斬新な発想や解決策を示すことと、これまで独創性を発揮してきたことをアピールすることです
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以上、『リタイアの心理学 定年の後をしあわせに生きる』から、早期退職するか、定年後も働くか、という二つの選択肢についてまとめました。 米カリフォルニア州のホーナー博士によると、どの時期に引退しても、引退者は年齢に関係なく同じ心理プロセスを通るといいます。それは、引退直後は満足して高揚気味、数年後に激しく落ち込み、その後、幸福感が続くというプロセスです。 自分の気持ちに正直になって、自分に合う適切な引退時期を見極めることが大切です。
- 【参考文献】 『リタイアの心理学 定年の後をしあわせに生きる』 (S・シュルツ監修、藤井留美 訳、日経ナショナル ジオグラフィック社) 文/庄司真紀
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