名古屋・教委の金品授受 あしき慣行の背景調査を(2024年3月4日『毎日新聞』-「社説」)

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教員団体からの金品授受について、記者会見で陳謝する名古屋市教育委員会=市役所で2024年2月11日午前10時1分、酒井志帆撮影

 教育の信頼を失墜させる、あきれた慣行と言わざるを得ない。

 名古屋市教育委員会の事務局が市内の教員団体から、校長などに推薦する教員の名簿と一緒に金品を受け取っていた。20年以上続いていた可能性があるという。

 市は第三者を交えた調査検証チームを発足させた。3月中に中間報告をまとめる見込みだ。

 市教委の説明によれば、2023年度は小中学校の校長会など約60団体から各5000~3万円の現金や商品券を受け取った。

 教職員課長を経験した局長級幹部らにも配分されていたという。

 市教委は人事への影響を否定する。しかし、やめれば不利益を被るかもしれないと教員団体側が考えていた可能性もあるだろう。 

 元文部科学官僚の寺脇研・京都芸術大客員教授を座長とする調査検証チームは、人事がゆがめられていないかを重点的に調べる方針を打ち出した。当然だ。

 教委は自治体ごとに設けられている行政機関だ。有識者や民間人から任命される複数の教育委員による合議制だが、業務のほとんどは事務局が担っている。

 事務局には教員出身者が多い。名古屋市教委の教職員課長も歴代、教員出身だった。身内意識によるなれ合いはなかったか。5人の教育委員は事務局の不適切な行為をなぜ、見過ごしてきたのか。悪習が放置されてきた背景も調査する必要がある。

 教委制度は戦後、政治からの独立を確保する目的で導入された。しかし、11年に大津市の中2いじめ自殺事件で隠蔽(いんぺい)体質が問題化し、15年に仕組みが変わった。

 名古屋市以外の自治体も、同じようなことがなかったか点検する必要があるだろう。

 公正であることの大切さを教えるのも学校の役割だ。再発防止を徹底し、襟を正してほしい。