部活動の地域移行、進む鶴岡 主役は生徒、徹底し貫け(2024年2月26日『山形新聞』-「社説」)

 休日の部活動指導を地元クラブなどに委託する「地域移行」が全国の公立中学校で進められている。本県でも県教委が改革ガイドラインを作成し、各市町村教委が取り組んでいる。鶴岡市では本年度、すべての中学校で実践がスタート、順調な移行ぶりが目を引く。一方で課題も見えてきた。「移行」自体を目的にするのではなく、生徒の成長を第一に考え、丁寧に推進していくことが肝要だ。

 地域移行は、持続可能で多様なスポーツ文化環境を整備し、生徒の体験機会を確保する改革。運動部活動の地域移行に関する検討会議は2022年、休日の部活動について25年度末までに地域移行を達成するよう提言、スポーツ庁文化庁は23年度から25年度までの3年間を改革推進期間とし、可能な限り早期の実現を目指すとのガイドラインを策定した。

 背景にあるのは、少子化の進行と教員の働き方改革だ。生徒数の減少で部活動の数を従来通り確保することが難しい時代になっている。社会全体で働き方改革の重要性が叫ばれる中、教職員の負担軽減は大きな課題だ。競技経験のない教員が指導せざるを得ないというミスマッチの改善も望まれる。

 県教委の調査によると、昨年末の時点で、休日の地域移行を進めている運動部は984部のうち328部、文化部は193部のうち60部だった。

 鶴岡市は21年と22年に学校長会長や中体連会長らによる検討委員会を開き、教員の指導下で行われる部活動は月―金の平日のみで、休日は行わないとする方針を示した。具体的な移行方法は(1)総合型地域スポーツクラブでの活動(2)スポーツ少年団での活動(3)保護者会が中心となった活動(4)民間クラブでの活動(5)競技団体の協力による合同部活動-の5パターンを想定。市教委は22年度に学区ごとに説明会を開催、本年度は全11中学の運動部106部、文化部25部すべてで、土日・休日の部活動について、地域の指導者らによる練習が実現した。

 市は昨年10月、生徒や保護者、外部指導者、教職員を対象に部活動改革に関するアンケートを行った。生徒は約7割の1946人が回答、「以前に比べ部活動の選択の幅や他校との交流が広がった」などとし、87%が「満足」「やや満足」と答えた。保護者は69%が「満足」「やや満足」と回答。教職員も「負担が軽減された」として「満足」「やや満足」が75%を占めた。

 一方、外部指導者は「満足」「やや満足」としたのは52%で、認識が微妙に異なる。改革に理解を示しながらも、活動時間や日数について48%が「物足りない」「やや物足りない」と答えた。アンケート結果からは地域移行がおおむね好評であることがうかがえるが、「指導者不足を解消してほしい」「移動にかかる負担が増えた」「金銭面の補助が必要」など課題を指摘する声もあった。

 中学校の3年間は一瞬一瞬がかけがえのない時間だ。時代の変化を考えると、地域移行は不可避だとしても、教員の職責の貴さが変わるわけではない。「地域移行の主役は生徒」であることを徹底して貫き、地域の指導者や保護者も含め、一つ一つ課題を解決していきたい。