ボクシング世紀の一戦に東京D4万人超観客も大興奮 井上尚弥見たくて全国からファン集結(2024年5月7日『スポニチアネックス』)

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<4団体統一世界スーパーバンタム級TM 井上尚弥・ルイス・ネリ>声援に応える井上尚(撮影・島崎忠彦)
 
 ボクシングの井上尚弥とルイス・ネリの一戦が行われた6日、東京ドームには多くのファンが押し寄せた。マイク・タイソンが1988年と90年に2度メインを務めて以来34年ぶりの同所興行で、日本人のメインは初。日本ボクシング史に残る一戦は、ファンの心にも刻まれた。
 井上尚が高校生の時からのファンだという大阪府在住の永井正浩さん(40)は「東京ドームに連れてきてくれてありがとう」と感謝した。同じくファンの岩崎智也君(11)と弟の修平君(8)は野球でもライブでもなく、ボクシングの試合で初の東京ドーム。2人は「強いところが好き」と言い、名古屋市から応援に来た。歴史的一戦を見るため、全国から4万3000人のファンが集結した。
 井上尚の地元ファンも観戦した。弟の井上拓真と自身の娘が小中学校で同級生だったという女性は「まさかドームで試合なんて」と目を潤ませる。アマチュア時代の後援会設立に関わり、インターハイ出場時には横断幕も作った。「尚弥から“拓真の試合ばっかり行って…”って言われたので、頑張って来ました!」と話した。
 34年前の興行を生観戦した人もいた。京都府から来た長谷川博巳さん(53)は「1回のダウンを見てタイソンの姿がよぎったが、KOで勝つあたりさすが井上」と絶賛。大橋ジムのアマチュア担当スタッフ平戸正幹さん(56)は前回、重量級ならではのドスンというパンチ音が印象的だったといい「今回は地面が揺れるような、尚弥一色の歓声が耳に残っています」と興奮気味だ。
 同ジムのアマチュア特別コーチを務める海藤晃さん(85)は34年前、「ここで歴史が変わるのか、と思った」と振り返る。同ジムの大橋秀行会長(59)の恩師で、井上尚が高校の時にはセコンドを担当。今回は少し離れた場所から、ビッグマッチに挑む“孫弟子”を見守った。結果は、渾身(こんしん)の右をぶち込んだ6回TKO勝ち。「今回は歴史どころか、別世界。さすが尚弥、と感服しました」。思いが募った。
 今回の勝利は、次世代のスターが誕生するきっかけにもなりそうだ。2カ月前にボクシングを始めた久村一晟君(8)は「こんな大きい会場でKO勝ちなんて、格好いい!いつか僕も東京ドームでやりたい」と目を輝かせる。熱狂が人々の心を揺らし、また新たな伝説への期待が高まった。 (小田切 葉月)