選抜高校野球/喜び胸に全力を発揮して(2024年3月3日『神戸新聞』-「社説」)

 第96回選抜高校野球大会は18日、西宮市の甲子園球場で開幕する。1月26日に大阪市内で選考委員会があり、報徳学園(兵庫)など出場32校が決まった。選手たちは聖地のグラウンドに立つ喜びを胸に、存分に力を発揮してほしい。

 日本高校野球連盟によると、第1回大会は1924(大正13)年4月1日、名古屋市郊外の球場に8校が出場して開催された。翌25年の第2回大会から会場となった甲子園球場は今年、歴史を刻んで100年の記念すべき年となる。

 兵庫の報徳学園は、2年連続23度目の出場を果たした。間木歩、今朝丸(けさまる)裕喜の両投手ら、準優勝だった昨年の主力が複数残り、選考委員会で守備力は全国トップ級と高い評価を得た。昨秋の近畿大会で課題に挙がった打撃面は、冬場にバットを振り込み自信に変えた。兵庫勢としても2002年大会以来となる制覇に期待したい。


 練習環境などのハンディ克服や地域貢献など戦力以外の要素を加味する21世紀枠で、春夏通じ初となる別海(北海道)と76年ぶり3度目の田辺(和歌山)が名乗りを上げた。特に別海は、最低気温0度未満の日が年平均で一年の半分以上あり日照時間も短く、農業用のビニールハウスを活用し練習するなど工夫してきた。その歩みに刺激を受ける球児は少なくないだろう。

 一方、1月1日に発生した能登半島地震で被災した北陸地方のうち、特に被害が大きかった石川県からは日本航空石川と星稜の2校が出場する。


 輪島市に校舎がある日本航空石川は、出場決定の吉報を受け入れ先である山梨県の系列校で聞いた。輪島市の祖母宅で被災した福森誠也選手は「野球をする気になれなかった」と明かすが、仲間や家族に背中を押されて山梨行きを決意したという。優勝候補の一角である星稜も、野球場が地割れして一時使えなくなった。

 阪神・淡路大震災が発生した1995年の大会では、兵庫から神港学園、育英、報徳学園の3校が出場し、いずれも初戦を突破し被災地に明るいニュースを届けた。石川の2校も甲子園で躍動し、地域の人たちに力と元気をもたらしてほしい。