角界の暴力 変わらぬ体質変革せねば(2024年3月3日『新潟日報』-「社説」)

 暴力行為がまたも発覚した。角界の体質が何ら変わらず、ファンの失望を招いている。

 当事者だけではなく、相撲界が一丸となり、暴力根絶へ力を注ぎ再発を防がねばならない。

 幕内の北青鵬が日常的に後輩力士へ暴力を加えていたことが明らかになり、日本相撲協会は、暴力行為に対する監督義務違反で、元横綱白鵬宮城野親方を委員から年寄への2階級降格と3カ月の20%報酬減額とする処分を決めた。

 北青鵬はコンプライアンス委員会が示した引退勧告案を受け入れ、現役を引退した。

 協会によると、北青鵬は2022年7月から23年11月にかけて、弟弟子2人に、ほうきの柄で尻をたたいたり、バーナー状にした炎を体に近づけたりした。指に瞬間接着剤を塗布する暴行もあった。

 親方は、北青鵬に対する監督を怠ったほかに、協会の調査に先立ち、部外者が関与した口止め工作も判明した。

 協会が「師匠としての素養、自覚が大きく欠如している」と、強く非難したのは当然だ。

 親方衆の序列で、最下位の年寄(再雇用者の参与を除く)となり、師匠としての立場もしばらく失われる。宮城野親方は厳粛に受け止め、反省しなければならない。

 親方は現役時代、史上最多の45度の優勝を重ねた一方で、粗暴な取り口や独善的な振る舞いで、協会から何度も処分を受けた。年寄襲名の際には、協会の規則を守るなどの誓約書にサインし異例の承認だった。

 今回、コンプライアンス委員会の中には「もう相撲協会から排除すべきではないか」との意見もあったという。

 「申し訳ない気持ちでいっぱい」と親方は謝罪した。今後は、心技体とも充実した力士の育成に努めてもらいたい。

 北青鵬は初土俵から3年で新入幕を果たし、将来を嘱望されていたが、謙虚な心が欠けていたという。親方がしっかり指導していれば、と悔やまれる。

 大相撲では、07年に時津風部屋時太山(本名・斉藤俊さん、新潟市北区出身)が親方や兄弟子の暴力を受け亡くなった。

 協会は再発防止策を打ち出し、研修会や啓発活動をしているが、暴力や賭博などの不祥事が後を絶たない。旧態依然の暴力体質がはびこっていることは明白だ。

 宮城野親方を責めるだけでなく、協会は危機感を持ち、再発防止策の強化など抜本的な改革の断行が求められる。