柿沢未途被告に懲役2年求刑 柿沢被告「万死に値する」と謝罪 東京地裁(2024年3月1日『東京新聞』)

 昨年4月の東京都江東区長選を巡り、区議らに現金の供与や申し込みをしたとして公選法違反(買収など)の罪に問われた前法務副大臣で元自民党衆院議員の柿沢未途被告(53)の論告求刑公判が1日、東京地裁であった。検察側は懲役2年を求刑し、弁護側は執行猶予付きの判決を求め、結審した。判決は14日。
 検察側は論告で、被告は対立していた当時の区長と自民都議だった息子の力をそぐため、前区長の木村弥生被告(58)=同罪で在宅起訴=を擁立し、当選を確実にするため自民区議らに現金を配ったと指摘。「金の力にものを言わせ政治的基盤を万全にしようとした犯行で、選挙の公正さを害し、悪質。国民の政治不信に拍車をかけた刑事責任は重大だ」と主張した。
柿沢未途被告

柿沢未途被告

 弁護側は最終弁論で「議員辞職し、反省して悔いている。再犯の恐れもない」と主張。検察が昨年12月28日に被告を逮捕したことに触れ「年末年始の時期に逮捕、取り調べする切羽詰まった事情はない。身柄の取り扱いは常軌を逸する処置だ」と批判した。
 柿沢被告は最終意見陳述で「政治家は天職と思ってきたが議員辞職し、皆さんの期待を裏切った。罪は万死に値する。多くの人に多大な迷惑をかけた。捜査の発端を作ったのは私で、重い責任を感じている」と謝罪した。
 起訴状によると、昨年2月に自民区議ら5人に計100万円を提供し、別の自民区議3人に計60万円の提供を打診。木村陣営スタッフだった女性(36)に40万円、元区議の板津(いたつ)道也被告(54)に約80万円を提供したとされる。また4月の選挙期間中、木村被告への投票を呼びかけるインターネット広告を約37万円で掲載したとされる。(中山岳)

◆「隠蔽工作」の契機は…東京新聞の「質問状」か

  論告求刑公判では、有料ネット広告に関する木村弥生被告への東京新聞の質問状も俎上(そじょう)に載った。
 東京新聞は昨年7月、広告掲載の有無や違法性の認識について書面で質問。「公選法違反という認識はなかった」との回答があった。
 検察側は論告で、東京新聞の質問状をきっかけに、木村被告から相談された柿沢未途被告がネット広告を自ら提案したことを隠し、木村被告に違法な有料広告との認識はなかったなどと事実と異なる説明をさせたと指摘。「積極的に隠蔽(いんぺい)工作に及んだ」と主張した。
 木村被告は柿沢被告と相談後、選挙運動の中心メンバーだった板津道也被告らと協議した上で、記者会見で「公選法に違反しないよう注意したが、選挙スタッフが単独で掲載した」などと説明していた。(井上真典)