4月28日投開票の衆院東京15区(東京都江東区)の補欠選挙を巡り、自民党内で公認候補の擁立を見送り、公明党とともに無所属候補を支援する案が出ている。相次ぐ「政治とカネ」の問題や選挙区特有の事情で、逆風下での厳しい戦いが見込まれ、「自民色」を薄める狙いがある。
「公明の支援取り付け最優先」
自民党東京都連(会長=萩生田光一・前政調会長)は東京15区補選の候補者を公募する方針を16日に確認した。しかし、小渕優子選挙対策委員長ら党本部側は「調整が必要だ」として、異例の「待った」をかけている。
東京15区補選は柿沢未途・前法務副大臣(自民を離党)の議員辞職を受けて実施される。柿沢氏は2021年衆院選に同区から無所属で出馬して当選し、自民に入党した。昨年12月、江東区長選(昨年4月)を巡る公職選挙法違反事件で逮捕された。
さらに、自民派閥の政治資金規正法違反事件も影を落としている。クリーンなイメージを重視する公明は自民候補の推薦に慎重姿勢だ。自民都連幹部は「公明の支援取り付けが最優先だ。誰かを無所属候補として出し、自公で推薦する形もあり得る」と語った。
小池氏に期待感
自民にとって、同区の支持層が一枚岩ではないことも懸念材料だ。
江東区長を務め、影響力を保持してきた山崎孝明氏(昨年4月に死去)や長男の一輝・前都議ら「山崎系」は、柿沢氏と長年の対立関係にある。公選法違反事件の影響で、選挙戦の実動部隊となる区議の多くが動きにくいことも厳しい情勢に追い打ちをかけている。
自民は、小池氏が特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」が補選に候補を擁立した場合、自公で支援に回る方式も排除していない。
自民は長崎3区でも候補者が未定だ。3補選の結果は、党総裁としての任期満了が9月に迫っている岸田首相の求心力に直結し、首相の次期総裁選や衆院解散の戦略にも影響する。
首相周辺は「当選が難しいのなら、『負け』を減らす方策を考えざるを得ない」と語った。
野党乱立 取り消しも
野党では、東京15区補選を巡り、日本維新の会、共産党がすでに公認候補予定者を発表した。立憲民主党も擁立を模索しているほか、野党系の無所属参院議員の出馬も取りざたされ、乱立の様相を呈している。
立民の泉代表は25日、甲府市内で「東京15区で自民には勝たせないという立場で、自分たちの候補者擁立を含め、最大限の努力をしている」と記者団に語った。
国民民主党も東京15区補選で新人の高橋茉莉氏の擁立を発表していたが、取り消す方針だ。玉木代表は25日、自らのX(旧ツイッター)に高橋氏について、「法令に抵触するおそれのある事実が明らかになった」と書き込んだ。
これに先立ち、高橋氏は25日、Xに「『立候補を断念しろ』と言われ、涙をのんで引き下がることにした」などと投稿し、その後削除した。