出生数の減少に歯止めがかからない。岸田文雄政権が打ち出している「次元の異なる少子化対策」の実効性が問われる状況だ。
2023年の出生数は、速報値で過去最少となる75万8631人だった。8年連続の減少で、100万人割れした17年から4分の1近く減ったことになる。婚姻件数も戦後初めて50万組を下回った。人口減少も加速している。
この傾向が続けば社会に及ぼす影響は計り知れない。経済を支える労働力の縮小は避けられず、高齢化が進む中、現役世代が減り社会保障制度の維持も難しくなる。
政府は少子化の流れを30年代に入るまでに反転させることを目指す。総額3兆6000億円規模の対策をまとめ、関連法案を国会に提出した。児童手当の拡充など、子育て支援が中心だ。
だが、少子化の最も大きな要因は結婚しない人が増えていることだ。結婚するかしないかは個人の自由だが、経済的な要因などにより、望んでもかなわない状況は改善しなければならない。
22年の連合調査では、最初の仕事が非正規だった女性は、正規だった場合より配偶者や子どもを持つ割合が低い。非正規やフリーランスの場合、育児休業が取りにくく収入減への保障も得られない。35歳未満の男性の婚姻率は、非正規が正規の3分の1にとどまる。
若者世代のライフスタイルや結婚に対する意識は変化している。
21年に実施された政府の出生動向基本調査によると、出産後も女性が仕事を続け、育児と両立できることを重視する人が男女とも増えている。
支障となっているのは、男女の役割分担意識だ。政府は男性の育児休業取得を後押ししているが、2割にも達していない。出産後も仕事を続ける女性は増えたが、キャリア形成を断念せざるをえない人もいる。
出産や子育てを「リスク」と感じがちな現状を変えていかなければならない。若者が将来に希望の持てる社会作りを急ぐ必要がある。
持続可能な社会を実現するには、少子化対策にとどまらず、人口減少にどう向き合うかの視点も必要になる。どのような手立てを講じていくのか。幅広い国民的な議論が欠かせない。