去年の出生数75万人余で過去最少を更新 「今後さらに減少か」(2024年2月27日『NHKニュース』)

少子化対策が進む中、去年1年間に生まれた子どもの数が、さらに減っていることがわかりました。
前年より5.1%減少し、75万8631人(速報値)。統計開始以来、過去最少を更新しています。
結婚の件数も減少していることから、専門家は「今後さらに減少する可能性がある」と指摘しています。

8年連続で出生数減少

厚生労働省によりますと、去年1年間に生まれた子どもの数は、外国人なども含めた速報値で75万8631人で、前の年より4万1097人、率にして5.1%減少しました。
出生数が減少するのは8年連続で、統計開始以来、過去最少になりました。

日本人の出生数は、戦後の第1次ベビーブーム期(1947年~49年)に大きく増え、1949年に最多の269万6638人が誕生しました。

いったん減少したあと、第2次ベビーブーム期(1971年~74年)の1973年には209万1983人が生まれました。
しかしその後は減少に転じ、2016年には97万7242人とはじめて100万人を下回り、その後も出生数は減り続けています。
国立社会保障・人口問題研究所が去年公表した予測では、日本人の出生数が76万人を下回るのは、2035年と推計していて、想定より10年以上早く少子化が進行しています。
一方、去年1年間に死亡した人は、速報値で159万503人でおととしより8470人増えて過去最多となりました。

結婚件数も減少 50万組下回る

結婚の件数も減少しています。
去年1年間の結婚の件数は速報値で48万9281組とおととしより3万542組、率にして5.9%減少しました。
厚生労働省によりますと、50万組を下回ったのは、1933年の48万6058組以来、90年ぶりだということです。

結婚の件数は、国が統計を取り始めた1899年は、29万7372組でした。
その後、増加傾向になり、第1次ベビーブーム世代が20代を迎えると結婚件数は年間100万組を超え、1972年には109万9984組で最多となりました。
この後は減少傾向となり、新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年は、52万5507組と前の年より7万3500組減りました。
おととしは、50万4930組と増加に転じましたが、去年は再び減少となりました。
厚生労働省は「若年層の人口が少なく、晩婚化・晩産化の影響やコロナ禍で婚姻数が減った影響もあり今後も中長期的に出生数の減少が想定される。少子化は危機的な状況で、関係省庁と連携して対策に取り組んでいきたい」としています。

国や自治体が婚活支援も

未婚化、晩婚化の進行を背景に国や自治体が少子化対策の一環として婚活を支援する動きも広がりを見せています。
少子化対策を推進するため、国は自治体が行う結婚支援の取り組みに交付金を出して支援していて、
▽結婚支援センターの運営やマッチングシステムの運用、
▽婚活セミナーの開催、
▽若い世代向けのライフデザインセミナーなどに活用されています。
こども家庭庁によりますと、去年3月末時点で結婚支援センターを運営している自治体は36道府県あり、このうち、AI=人工知能を活用したマッチングシステムを導入している自治体が31府県あるということです。

とちぎ結婚支援センター開所式(2017年1月)

このうち栃木県は、2017年に県の事業として結婚支援センターを設立し、県内4か所の拠点に結婚相談員を配置して支援を行っています。
民間のサービスよりも安い価格で利用できる一方、本人確認は厳密に行い安心して利用できる体制を整えているということで、栃木県によりますと、利用の動機として行政が運営していることをあげる人も多いということです。
また、栃木県は、出会いの選択肢を広げるため、「AIマッチング」も導入し、相手探しの際の検索や閲覧の履歴をAIが分析しておすすめの相手を提案しているということです。
栃木県ではことし1月末までのおよそ7年間で258組が結婚にいたったということです。

「とちぎ結婚支援センター」片柳克司マネージャー
「結婚を希望する人にとっては出会いがないのが課題になっていて、そうしたニーズに安心安全に利用できる行政の取り組みが合致しているのではないかと思う。婚活を始めようと思ってもなかなか踏み出せない人も多いと思うので、そのはじめの一歩として活用してもらえるよう今後も取り組んでいきたい」

“出会い方”にも変化が

社会環境や価値観の変化とともに、結婚する相手との出会い方も変わってきています。
「国立社会保障・人口問題研究所」の調査によりますと、かつては親や親戚など周囲の人が相手に引き合わせる「お見合い結婚」が主流で半数以上を占めていたものの、次第に「恋愛結婚」が増加し、1960年代に「恋愛結婚」の割合が「お見合い結婚」を逆転しました。
そして最近ではSNSマッチングアプリなどインターネットを活用して結婚相手と知り合うケースが増加していて、2021年には15.1%と「お見合い結婚」の9.8%を上回っています。

結婚や家族に関する調査・研究を行うリクルートブライダル総研が2023年に行った「婚活実態調査」では、2022年に結婚した人のうち婚活サービスを利用していた人は32.7%で、そのうち婚活サービスを通じて結婚した人の割合は47%と利用者のおよそ2人に1人が結婚に至ったという結果になっています。
リクルートブライダル総研は若い世代を中心に恋愛や結婚に関する価値観も変化して効率性や合理性を重視する傾向がみられ、そのニーズの高まりが婚活サービスを利用する人の増加につながっていると分析しています。

リクルートブライダル総研 落合歩所長
「婚活サービスは目的が明確で、コミュニケーションも合理的になり、結婚までのスピードが早いということも今の若年層の価値観と合っているのだと思う。社会が変容していくなかで、出会いの形がお見合いから恋愛結婚に変わったように、1つのステージがまた変わっていくきざしなのかなと思っている。結婚の希望を叶えるためにこうした婚活サービスを広げていくことは有効な手段だと思うし、自分にあった婚活の形を見つけながら活動することが重要になる」と話していました。

「2025年にはさらに大幅に引き下がる可能性」

出生数の減少について、人口問題に詳しい日本総合研究所の藤波匠上席主任研究員に聞きました。

日本総合研究所 藤波匠上席主任研究員

「2020年のコロナ禍で雇用が不安定になったり、行動制限で出会いの機会が減少したりするなどして、婚姻数がかなり減った。日本では結婚して2年ぐらいたつと子どもが生まれることが分かっているので、去年の出生数に影響したと考えられる。去年の婚姻数もおととしに比べて大幅に減っているので、2025年ごろには出生数がさらに大幅に引き下がる可能性がある」

そして、出生数の減少が続く背景については、次のように指摘しています。

「構造的に賃金が上がらず、将来夢のある生活をイメージしにくく、若い世代で子どもを持つ意欲の低下があることは間違いない。企業が若い世代に向けて将来への投資というイメージで賃金を上げていくことを怠ったことが大きなマイナス要因となっている」

さらに、ジェンダーギャップも課題だとしています。

「働く女性は増えたが、男女の賃金格差があるままだと女性は働きながら家庭内の家事や育児、介護というものを引き受けざるをえず、結果的に女性の出産や結婚への意欲が低下する。賃金を上げ、社内でのジェンダーギャップをなくしていくことが必要で、男女がともに家事育児をして働くことができ、お互いに支えていく社会をつくっていくべきだ」

官房長官「前例のない規模で対策強化」

官房長官は午後の記者会見で。

少子化の進行は危機的な状況にあり、若年人口が急激に減少する2030年代に入るまでの6年程度が傾向を反転できるか どうかのラストチャンスだ。少子化対策は待ったなしの瀬戸際にあり、『こども未来戦略』に基づき、前例のない規模で対策の強化に取り組んでいく」

また去年1年間の結婚の件数が90年ぶりに50万組を下回ったことについて。

「若い世代の所得の向上を図り、 将来の見通しを持てるようにすることが重要だ。低所得などを理由に結婚や出産をためらうことがないよう賃上げに取り組み、特に若者の経済的基盤の強化を図っていく」