少子化対策が進む中、去年1年間に生まれた子どもの数が、さらに減っていることがわかりました。
前年より5.1%減少し、75万8631人(速報値)。統計開始以来、過去最少を更新しています。
結婚の件数も減少していることから、専門家は「今後さらに減少する可能性がある」と指摘しています。
8年連続で出生数減少
厚生労働省によりますと、去年1年間に生まれた子どもの数は、外国人なども含めた速報値で75万8631人で、前の年より4万1097人、率にして5.1%減少しました。
出生数が減少するのは8年連続で、統計開始以来、過去最少になりました。
日本人の出生数は、戦後の第1次ベビーブーム期(1947年~49年)に大きく増え、1949年に最多の269万6638人が誕生しました。
結婚件数も減少 50万組下回る
結婚の件数も減少しています。
去年1年間の結婚の件数は速報値で48万9281組とおととしより3万542組、率にして5.9%減少しました。
厚生労働省によりますと、50万組を下回ったのは、1933年の48万6058組以来、90年ぶりだということです。
結婚の件数は、国が統計を取り始めた1899年は、29万7372組でした。
その後、増加傾向になり、第1次ベビーブーム世代が20代を迎えると結婚件数は年間100万組を超え、1972年には109万9984組で最多となりました。
この後は減少傾向となり、新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年は、52万5507組と前の年より7万3500組減りました。
おととしは、50万4930組と増加に転じましたが、去年は再び減少となりました。
厚生労働省は「若年層の人口が少なく、晩婚化・晩産化の影響やコロナ禍で婚姻数が減った影響もあり今後も中長期的に出生数の減少が想定される。少子化は危機的な状況で、関係省庁と連携して対策に取り組んでいきたい」としています。
国や自治体が婚活支援も
このうち栃木県は、2017年に県の事業として結婚支援センターを設立し、県内4か所の拠点に結婚相談員を配置して支援を行っています。
民間のサービスよりも安い価格で利用できる一方、本人確認は厳密に行い安心して利用できる体制を整えているということで、栃木県によりますと、利用の動機として行政が運営していることをあげる人も多いということです。
また、栃木県は、出会いの選択肢を広げるため、「AIマッチング」も導入し、相手探しの際の検索や閲覧の履歴をAIが分析しておすすめの相手を提案しているということです。
栃木県ではことし1月末までのおよそ7年間で258組が結婚にいたったということです。
「とちぎ結婚支援センター」片柳克司マネージャー
「結婚を希望する人にとっては出会いがないのが課題になっていて、そうしたニーズに安心安全に利用できる行政の取り組みが合致しているのではないかと思う。婚活を始めようと思ってもなかなか踏み出せない人も多いと思うので、そのはじめの一歩として活用してもらえるよう今後も取り組んでいきたい」
“出会い方”にも変化が
リクルートブライダル総研 落合歩所長
「婚活サービスは目的が明確で、コミュニケーションも合理的になり、結婚までのスピードが早いということも今の若年層の価値観と合っているのだと思う。社会が変容していくなかで、出会いの形がお見合いから恋愛結婚に変わったように、1つのステージがまた変わっていくきざしなのかなと思っている。結婚の希望を叶えるためにこうした婚活サービスを広げていくことは有効な手段だと思うし、自分にあった婚活の形を見つけながら活動することが重要になる」と話していました。
「2025年にはさらに大幅に引き下がる可能性」
出生数の減少について、人口問題に詳しい日本総合研究所の藤波匠上席主任研究員に聞きました。
「2020年のコロナ禍で雇用が不安定になったり、行動制限で出会いの機会が減少したりするなどして、婚姻数がかなり減った。日本では結婚して2年ぐらいたつと子どもが生まれることが分かっているので、去年の出生数に影響したと考えられる。去年の婚姻数もおととしに比べて大幅に減っているので、2025年ごろには出生数がさらに大幅に引き下がる可能性がある」
そして、出生数の減少が続く背景については、次のように指摘しています。
「構造的に賃金が上がらず、将来夢のある生活をイメージしにくく、若い世代で子どもを持つ意欲の低下があることは間違いない。企業が若い世代に向けて将来への投資というイメージで賃金を上げていくことを怠ったことが大きなマイナス要因となっている」
さらに、ジェンダーギャップも課題だとしています。
「働く女性は増えたが、男女の賃金格差があるままだと女性は働きながら家庭内の家事や育児、介護というものを引き受けざるをえず、結果的に女性の出産や結婚への意欲が低下する。賃金を上げ、社内でのジェンダーギャップをなくしていくことが必要で、男女がともに家事育児をして働くことができ、お互いに支えていく社会をつくっていくべきだ」
林官房長官「前例のない規模で対策強化」
林官房長官は午後の記者会見で。
また去年1年間の結婚の件数が90年ぶりに50万組を下回ったことについて。
「若い世代の所得の向上を図り、 将来の見通しを持てるようにすることが重要だ。低所得などを理由に結婚や出産をためらうことがないよう賃上げに取り組み、特に若者の経済的基盤の強化を図っていく」