乙武氏出馬の仕掛け人・小池都知事は姿見せず…知事選にらみ側近「一番恐れていた流れ」(2024年4月29日『読売新聞』)

 28日に投開票された衆院3補選は、自民党派閥の政治資金規正法違反事件など「政治とカネ」の問題が逆風となり、自民は、唯一候補を擁立した島根1区で敗れ、ほかの2選挙区の「不戦敗」と合わせ、全敗の結果に終わった。保守王国が陥落、錦織さん「自民を許すか許さないかの選挙になった」…2度の首相応援も及ばず

立民・酒井さん、政権批判票集める

 自民が候補擁立を断念し、9人による混戦となった東京15区(東京都江東区)補選。午後8時、立民新人の酒井菜摘さん(37)の当選確実が報じられると、酒井さんの事務所では、支援者から歓声が上がった。

衆院東京15区補選で当選確実となり、花束を手に笑顔の酒井菜摘さん(28日午後8時16分、東京都江東区で)=須藤菜々子撮影
衆院東京15区補選で当選確実となり、花束を手に笑顔の酒井菜摘さん(28日午後8時16分、東京都江東区で)=須藤菜々子撮影

 事務所に姿を見せた酒井さんは、駆けつけた立民の長妻政調会長と握手し、「野党第1党として責任を持って、まっとうな政治を実現していく」と決意を語った。

 東京15区補選は、公職選挙法違反事件で有罪が確定した柿沢未途・前法務副大臣(自民を離党)の辞職に伴うもの。2019年には同区選出の自民議員だった秋元司氏が汚職事件で逮捕されており、自民の「政治とカネ」を巡る不祥事が相次いだ。酒井さんは「クリーンな政治」を目指すと宣言し、政権批判票を取り込んだ。

 長妻氏は「自民党の政治改革案と裏金問題の実態解明に有権者からの落第点がついた。岸田首相は(衆院)解散・総選挙をして、国民に(民意を)問う必要がある」と力を込めた。

小池氏の「前例のない支援体制」実らず

 一方、国民民主党政治団体「ファーストの会」などが推薦する無所属新人の乙武洋匡さん(48)は午後8時過ぎ、「多くの方に支援をいただいたが、力不足だった」と声を落とした。

敗戦の弁を述べる乙武洋匡さん(28日午後8時5分、江東区で)=後藤嘉信撮影
敗戦の弁を述べる乙武洋匡さん(28日午後8時5分、江東区で)=後藤嘉信撮影

 乙武さんに出馬を打診したのは、小池百合子都知事だった。小池氏は当初、自民、公明両党の推薦を取り付けようとしたが、地元の反発などで見送りに。12日間の選挙戦のうち9日間も応援に入り、演説や選挙カーへの同乗を繰り返すなど、「前例のない支援体制」(小池氏周辺)を取った。

 だが、乙武さんへの支持は広がらず、この日、落選で沈む事務所に小池氏が姿を見せることもなかった。小池氏は3選を目指し7月の都知事選への出馬が濃厚とされるが、小池氏側近は「一番恐れていた流れになってしまった」とこぼした。

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