仮放免者の住居 生存権支える施策こそ(2024年2月27日『東京新聞』-「社説」)

 日本の在留資格がなく入管施設に収容された外国人で、病気などの事情で一時的に拘束を解かれた仮放免者の2割が路上生活を経験していたことが分かった。
 住居の確保は命を守ることにつながる。政府や自治体は仮放免者の生存権を守るため、住居確保に向けた施策を進めるべきだ。
 仮放免者は2022年末時点で3391人。就労や登録地域外への移動は禁じられ、生活保護など公的支援の対象外なので医療保険にも加入できない。多くが支援団体の援助などで暮らしている。
 困窮者を支援する3団体は昨年12月、仮放免者の居住実態についての調査結果を発表した。回答した146人のうち22%が路上生活を経験し、46%が家賃、40%が光熱水費を滞納していた。過去に滞納経験がある人は家賃、光熱水費とも約6割に上った。
 コロナ禍で失業し、在留資格を失う外国人は増える一方で、支援団体の宿泊施設は満杯。経済難で寄付は減り、物価高もあって支援活動も限界に近づいている。
 3団体は国などに、家賃の安い公営住宅への入居を仮放免者にも認めることや、支援団体を介した公営住宅の空き室利用のための措置などを要望した。いずれも速やかに実施することが必要だ。
 ただ、問題の原因は仮放免者に就労を認めず、収入がないことにある。調査では回答者の8割以上が就労可能だが、国は就労が「不法滞在の容認、助長につながる」と禁じる。これは年内施行の改正入管難民法でも変わらない。
 仮放免者の多くが難民認定の申請中や裁判での係争中だが、いずれも時間がかかる。申請や裁判は権利であり、その間も生存権が保障されて当然だ。留学生のように制限付きであっても就労を認めるべきではないか。
 仮放免者には日本で生まれ育った子どもたちもいる。日本も批准している子どもの権利条約に照らしても、路上生活と紙一重の境遇が看過されてはならない。
 何より日本の難民認定率が2%(22年)と、欧米諸国と比べて桁外れに低いことが、仮放免者の困窮の根底にあることも忘れてはなるまい。
 上川陽子外相は昨年12月のグローバル難民フォーラムで、世界の人道状況改善に向けた決意を述べた。その視線はまず足元の未認定難民らに向けられるべきである。