被差別部落情報サイトに自宅が…運営する出版社に記事削除命令「平穏な生活を送る利益を侵害」大阪地裁(2024年5月7日『YTB読売テレビ』)

 
 被差別部落の情報をまとめたウェブサイトに自宅が掲載されたとして、大阪府の男性が投稿の削除を求めた仮処分申請で、大阪地裁はサイトを運営する出版社に削除を命じました。
 大阪府の70代の男性は、神奈川県川崎市の出版社が運営する被差別部落の情報がまとめられた ウェブサイトに自宅が映り込んだ写真などを掲載され、「差別されない権利」を侵害されたとして記事の削除を求め、大阪地裁に仮処分を申し立てていました。
 出版社側は「具体的な権利侵害は確認されていない」などと反論していましたが、大阪地裁は「差別を受ける恐れなく、平穏な生活を送る利益を侵害している」として、5月1日付で出版社に記事の削除を命じました。
 申立人の男性(70代)
「(ネット掲載でも)差別を拡散する危険性がある。やり方としてダメだと裁判所が言い切っているから、素直に受け止めてほしいと思っている」
 男性の支援にあたった部落解放同盟大阪府連は、府内の40か所ほどで同じような記事が掲載されているとして、今後、削除を求めて提訴する方針です。
 
被差別部落情報サイト運営側に記事の削除命じる決定 大阪地裁(2024年5月7日『NHKニュース』)
 
被差別部落の情報をまとめたウェブサイトに、自宅が写り込んだ写真などを投稿されたとして、大阪の70代の男性が削除を求めた仮処分の申し立てについて、大阪地方裁判所は「差別を助長するものだ」などとして、サイトの運営側に削除を命じる決定を出しました。
 
大阪府に住む70代の男性は、川崎市にある出版社が運営する、被差別部落の情報をまとめたウェブサイトに、自宅が写り込んだ写真や「同和事業で整備された」などと書かれた記事を投稿され「差別されない権利」を侵害されたとして、去年11月、大阪地方裁判所に記事の削除を求める仮処分を申し立てました。
これについて大阪地方裁判所の井上直哉裁判長は、7日までに決定を出し「その地域の居住者というだけで否定的な評価をするという誤った認識が、根強く残っていることなどを鑑みると、投稿された記事は差別を助長するものだ」と指摘しました。
そのうえで「地域の秩序や治安に問題があるように示しており、差別されるおそれがなく平穏な生活を送る利益を侵害するものだ」などとして、男性の申し立てを認め、サイトの運営側に記事の削除を命じました。
申し立てをした男性は、7日記者会見し「裁判所には踏み込んだ判断をしていただいた。私たちには苦しみがあり、サイトに載せているだけでも差別につながることを受け止めてほしい」と話していました。
一方、サイトを運営する出版社はホームページ上で「仮処分の命令は履行しました。記事の削除などを命じられたもので、当該地域を再び訪れることは禁止されていません」などとコメントしています。
 
 
被差別部落の情報サイトに自宅写真「記事は差別助長」運営側に削除命じる仮処分命令  大阪地裁 申立人「手を変え品を変え差別する人に屈しない」(2024年5月7日『MBSニュース』)
 
被差別部落の情報を網羅的に掲載したウェブサイトで、自宅が写り込んだ写真などが載った記事を投稿され、「差別されない権利」を侵害されたとして、大阪府内の男性が記事の削除を求めた仮処分の申し立てで、大阪地裁は申し立てを認め、運営側に記事の削除を命じました。
神奈川県川崎市の出版社の代表を務める男性は、自らが運営する自社サイトで、地名や写真、“解説文”など、全国の被差別部落の情報を載せた記事を多数投稿。地裁の決定文によると、去年10月末時点で300か所以上が掲載されています。
このウェブサイト中の記事で、自宅が写り込んだ写真を載せられるなどした70代男性(大阪府在住)は、「被差別部落を特定・暴露し、人権侵害の意図も強固。憲法が保障している『差別されない権利』を侵害している」として、去年11月、当該記事の削除を命じるよう、大阪地裁に仮処分命令を申し立てていました。
これに対し運営男性側は、「部落が差別を受けているとは考えていないし、そうした主張もしていない」「当該記事に個人を貶めるような表現はなく、記事によって差別を受け不利益を被った事実は確認されていないはず」として、申し立てを退けるよう求めていました。
大阪地裁(井上直哉裁判長)は5月1日付けの決定で、「現在もなおその地域の居住者だというだけで、否定的評価をするという誤った認識が根強く残っていることを踏まえると、当該記事は差別を助長するものだ」とした上で、「差別を受けることなく平穏な生活を送るという、人格的利益を侵害している」と認定。
運営男性に対し、当該記事の削除を命じました。
申立人「差別を許すわけにはいかない」
申立人の男性は7日の会見で、「絶えずこういうことの繰り返しになるかもわかりませんが、差別を許すわけにはいかない、その一言だと思います。手を変え品を変え差別をしてくる人に、屈するわけにはいきません」と現在の心境を語りました。
運営男性側「特定の記事削除を命じられたものであって、現地の再探訪まで禁止されていない」
運営男性側はウェブサイト上で、「仮処分命令は履行しました」としたうえで、「当然のことですが、特定の記事の削除を命じられたものであって、現地を再探訪することまでは禁止されていません」とコメントしています。
この運営男性をめぐっては、全国の被差別部落の地名リストを載せた書籍の出版などを計画し、被差別部落出身者ら200人あまりなどが、出版差し止めなどを求め東京で提訴。1審・2審ともに、出版差し止め(一部の県のリストは除く)や損害賠償を命じる判決が出ています。