『桐島、部活やめるってよ』などの作家、朝井リョウさんが不思…(2024年2月27日『東京新聞』-「筆洗」)

 『桐島、部活やめるってよ』などの作家、朝井リョウさんが不思議なことを書いていた。小学生のとき、「花粉症にあこがれていた」-

▼朝の点呼で先生から健康状態を聞かれる。このとき、誰かが「花粉症です」と答えるのがどこか、「ト・ク・ベ・ツ☆」で「たまらなくかっこよく聞こえていた」そうだ。花粉症になるため、何かの花の花粉を吸い込む努力までしていたと告白している

▼この数字を見れば、かつての朝井少年も花粉症を「ト・ク・ベ・ツ☆」とはもはや思わないだろう。ロート製薬が子どもの親御さんを対象にアンケートをしたところ、今や、小学生のほぼ半数が「花粉症を実感している」そうだ

▼クラスの半数が鼻をクシュクシュさせ、クシャミをしている気の毒な光景を思い浮かべてしまう。0~16歳の子どもでは、「病院で花粉症の診断を受けた」「多分花粉症だと思う」の回答が合わせて42・6%。10年前から約10ポイント増という

▼花粉症が社会問題といわれ、久しいが、その勢いが止められない。現在の小学生の子どもが発症した年齢は平均で5・8歳と聞いてかわいそうになる。大人でもつらいのに、そんな小さなころから目のかゆみや鼻水に苦しんでいるとは。学習や運動にも差し障りがあろう

▼なんとかしたい。このペースでいくと、間もなく、花粉症ではない子の方が「ト・ク・ベ・ツ☆」になる。