セーフティーネットを強化し、生活に困窮する人が適切な支援を受けられる体制を整えなければならない。
生活保護法と生活困窮者自立支援法の改正案が国会に提出された。保護法は最低限度の生活を保障する制度で、支援法は生活保護に至る前段階の人が主な対象だ。
生活保護の申請件数は4年連続で増えており、2023年12月時点で、過去最多となる165万3778世帯が受給した。
コロナ対策の特例貸付金の返済が昨年から始まったことや、物価高が背景にあると指摘される。
日本では6人に1人が貧困ライン以下の生活を余儀なくされている。ひとり親世帯や高齢者など、生活保護受給には至らないものの困窮している人は少なくない。
法改正の柱は、子どもの貧困への対応と住まいの支援だ。
大学などへの進学率は全世帯平均の7割超に対して、生活保護世帯では約4割にとどまる。進学時に支給していた生活準備金を今後は就職時にも適用する。高卒後に就労し、1人暮らしをする若者には30万円が支給される。
生活保護世帯の暮らしぶりは、自治体などのケースワーカーが把握しているが、子どもには目が行き届きにくいと指摘されている。新たに、奨学金の情報提供や進路選択の助言などをする訪問支援の仕組みを整える。
支援の拡充によって子どもの選択肢を広げ、貧困の連鎖を断つことが重要だ。
困窮者にとって住まいの確保は大きな課題だ。単身世帯の高齢者が増えているが、公営住宅は狭き門で、民間賃貸住宅への入居は家主らから敬遠されがちだ。
このため、住宅確保が困難な人への自治体の住まい支援を強化する。今よりも安い家賃の住居に転居する人の引っ越し費用を自立支援法の給付金の対象に加える。
NPOや社会福祉法人などが見守りを行うことで、家主が貸しやすいようにする法案も国会に提出されている。入居後も暮らしを支えていく必要があり、関係機関の連携が欠かせない。
少子高齢化が進む中、孤独・孤立など貧困の形は多様化している。誰も取り残されることがないよう対策を講じる必要がある。