ひとり親世帯調査 住まいの貧困 浮き彫り(2024年3月31日『沖縄タイムス』-「社説」)

 低い持ち家率に絶対数が少ない公営住宅、家賃が家計を圧迫するなど、浮き彫りになったのは「住まいの貧困」である。


 県のひとり親世帯を対象とした2023年度の実態調査報告書が公表された。

 ひとり親世帯の支援強化につなげようと5年に1度実施しているもので、今回の調査では初めて「住居費負担率」に関する質問が盛り込まれた。

 もとより県民の持ち家率は44・4%で全国一低いが、母子世帯に限れば、父母宅に同居するケースを含んでも持ち家率は24・5%と極端に低かった。最も多かったのは民間のアパートや賃貸マンションで52・3%、県営・市町村営団地など公営住宅の15・6%を合わせると約7割が借家住まいだった。

 同じ借家でも、低所得者向けのセーフティーネットの役割を担う公営住宅と、公的補助のない民間賃貸では負担感が全く違う。

 調査では民間借家に住む母子世帯の35・4%が、月収に対する住居費の割合を示す住居費負担率が30%以上という「過重負担」となっていることが明らかになった。40%以上も2割近かった。

 問題は民間借家などに住む母子世帯の約半数が、公営住宅への入居を希望しているにもかかわらず、入居が進まないことである。

 ひとり親世帯に対する一定の優先枠はあっても、そもそも数が少なく、諦めたという人が少なくない。

 離婚を機に転居を余儀なくされ、高い家賃に苦しむシングルマザーの姿が浮かぶ。

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 母子世帯の住まいを巡る問題は、負担率の高さだけではない。部屋の狭さにも悩まされているのだ。

 調査で自宅の部屋数を尋ねたところ、「3室」39・6%、「2室」32・1%と続いた。その他の世帯と比べると「2室」の回答が目立って多かった。

 コロナ禍のオンライン授業の際、自分の部屋がなくて集中できなかったという話を聞いたことを思い出す。たとえ家族同士であっても、生活音や狭い空間にストレスを感じることはあるのではないか。

 県の母子世帯割合は4・38%、父子世帯は0・54%で、いずれも全国の2倍近い。一方、困窮するひとり親世帯は6割を超える。

 子どもの教育支援や親の就労支援に比べあまり注目されてこなかったが、生活環境としての住まいの貧困は見過ごせない問題だ。

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 母子世帯の95・4%が、物価高騰で生活が苦しくなったと訴えるなど、状況は切羽詰まっている。

 値上げの春がやってくる。4月以降、予定されている食品値上げは2800品余。電気やガス代の負担を抑える補助金は5月で終了する。

 低所得層の住まいの受け皿となる公営住宅が足りない以上、社会保障の一つとして「家賃補助の導入」を検討すべきである。

 シングルマザー向けに、家賃負担が少なく子育てを支え合うシェアハウスのようなものが増えてもいい。