創造学サミット/復興へ子どもの学びつなげ(2024年2月25日『福島民友新聞』-「社説」)

 双葉郡の8町村では東京電力福島第1原発事故後、小学校から高校までの全ての学校で探究型の学習プログラム「ふるさと創造学」が行われている。子どもたちが地域をテーマに課題を設定して自ら学んでいく取り組みで、毎年12月には成果発表の場として児童生徒が集まる「ふるさと創造学サミット」が開かれてきた。

 最初のサミットは2014年に郡山市で行われ、各地に避難した子どもが初めて一堂に会する機会となった。新型コロナウイルスの影響で第7、8回はリモート、第9回は初めて郡内の富岡町で開催したが、参加者数は制限された。そして昨年12月に広野町で開かれた第10回で、ようやく郡内で制限なく開催することができた。

 避難指示の解除で元の町村での学校再開が進んだが、双葉町の小中学校と県立富岡支援学校はいわき市での授業を余儀なくされている。サミットは、町村や学年の枠を超えた交流の場として機能してきた。復興を担う次世代が「双葉の子」としてつながっていくためにも、双葉郡の新たな伝統として継続していくことが重要だ。

 原発事故後、郡内の学校に通う児童生徒の数は大幅に減少した。そのため、各町村は学校を統廃合し、小中連携のシステムを導入するなどして少人数教育を充実させてきた。ただ、集団での効果が期待される学びやスポーツの実施は難しく、高校に進学したり、社会に出たりした時、経験の不足が支障にならないか懸念されている。

 サミットでは、他校の児童生徒の前で学んだ成果を発表する。その後に、聞いていた子どもが疑問などを発表者に伝える。参加者からは「緊張したけど話し合いが楽しかった」との声が上がる。各教委には、サミットを子どもが多様な意見に触れながら、自分の考えを表現し、行動する力を身に付ける機会として役立ててほしい。

 富岡町の岩崎秀一教育長は、サミットの発表内容は変化してきたと指摘する。帰還の見通しが立たない頃は、大人から話を聞き、かつての古里の魅力を知るという発表が多かった。元の町村で学校再開すると、「復興に子どもとして何ができるのか」というテーマが目立ってきたという。

 震災から13年が経過する中、児童生徒と若手の教職員が原発事故を直接経験せず、震災前の双葉郡を知らないという状況が生じている。サミットが10回を数えた節目に、復興と地域再生を実現していく「双葉郡ならでは」の課題解決型の学びの在り方を再び探っていく努力が欠かせない。