フリースクール 公認で多様な学びさらに(2024年2月22日『信濃毎日新聞』-「社説」)

 不登校の児童生徒の学びを保障するため、県が4月から、独自の信州型フリースクール認証制度を始める。

 心身のつらさ、居づらさなど、さまざまな理由で学校教育から逃れる子どもが全国で増え続けている。

 その居場所として、自由で多彩な学びを提供してきた民間のフリースクールを県が公認する。上限200万円を補助し、懸案だった安定的な運営を支える。

 一人一人の状況や希望に応じた「子ども本位」の教育の拡充に向け、公教育に一石を投じる試みとして注目したい。

 もちろん、制度化によってフリースクールの自由度の高さを損なったり、型にはめたりするようではいけない。県は随時、子どもらを含む関係者の意見を聞き、制度を点検、改善していくという。大切な視点である。

 支援計画がある、毎週一定以上開所している、在籍校と連携している、積極的に情報開示している―などの要件に沿って、専門家らの審査会を経て認証する。法人か個人かは問わない。

 県は運営資金の補助のほか、どこにどんな施設があるかの情報発信、スタッフ研修などで支援する。子どもの利用料の補助も市町村に協力を呼びかけており、既に諏訪市が新年度予算への計上方針を明らかにしている。

 不登校の子どもは増え続けている。県内小中学生の不登校は2022年に5735人と過去最多を更新し、5年間で2・2倍に増えた。約100施設あるというフリースクールの利用者も同396人と4・2倍の伸びだ。

 17年施行の教育機会確保法は「学校以外の場での多様な学習活動」の重要性を明記した。

 昨年10月、滋賀県東近江市長は「多くの親は嫌がる子に無理してでも義務教育を受けさせようとしている。公立学校の存在を否定しかねない」などとフリースクールを容認する流れを批判した。

 不登校なお子ども側の問題と捉える時代錯誤とはいえ、教育研究者の古山明男さんは本紙教育面で「市長の考えは義務教育に関する長い間の常識だった。今も多くの人の思いを代弁している」とも指摘している。

 「学校」に違和感があっても我慢する児童生徒や学校以外の選択肢に戸惑う親も少なくないはずだ。認証制度を、不登校の子どもの選択肢を増やす次元にとどめてはいけない。子ども本位の教育のあり方を、学校も含めて問い直すものに育てたい。