おかしいことはおかしい(2024年2月25日『新潟日報』-「日報抄」)

 「もう住めないかな。喪失感しかない」。能登半島地震液状化現象で自宅が傾いた、新潟市西区の女性の言葉だ。住まいの破損は被災者を打ちのめす

▼一方で、住宅の再建は日常を取り戻す大きな一歩になる。資金面での支えになるのが被災者生活再建支援法だ。「私有財産には税金を投入しない」としていた国に対し、作家の小田実さんら阪神大震災の被災者が公的支援の必要性を訴え、1998年の成立にこぎ着けた

▼当初の使途は家財購入などに限られ、住宅本体には使えなかった。これでは暮らしを取り戻せないと、中越地震中越沖地震の被災者が声を上げた。神戸市の被災者支援団体代表で、小田さんらと支援法成立に尽力した中島絢子さんも中越の被災地を訪れ「次の災害のため、阪神中越が連携して法律の壁を崩さなければいけない」と訴えた

▼2007年に支援法が改正され、住宅再建にも使えるようになった。年齢や年収の制限も撤廃された。公的支援は被災地の運動によって改善されてきた

能登半島地震で国は同法に基づく支援金と合わせ、石川県の一部地域の高齢者世帯などを対象に最大300万円を上乗せ支給する方針を決めた。しかし本県や富山県は対象外だ。公平性の面から疑問視する声が上がる

▼「残念ながら、被災した当事者が声を出すしかないんです」。83歳になった今も被災者支援を続ける中島さんは訴える。おかしいことはおかしいと言わなければ、次の災害時にも不合理なことがまかり通る。

 

被災者生活再建支援法 (内閣府)