「魚フェス」in 代々木公園に「能登かき」出店 自宅壊れ、カキ小屋営業も諦めたけど…「前に進みたい」(2024年2月22日『東京新聞』)

 能登半島地震で被災した「能登かき」の生産業者が、東京都渋谷区の代々木公園で22日に始まった「SAKANA & JAPAN FESTIVAL 2024(魚ジャパンフェス)」(実行委員会主催)に出店している。地震で養殖に必要な作業所などが被害を受けたが、「おいしいカキを届けたい」と意気込んでいる。25日まで。

◆「日本一のカキ届けたい」25日まで

能登かきを焼く木村功さん(右)と恵子さん=22日、東京都渋谷区で

能登かきを焼く木村功さん(右)と恵子さん=22日、東京都渋谷区で

 石川県七尾市で約40年間にわたりカキを生産する木村功商店の店主木村功さん(82)が会場の出店で、カキを手際よく焼いていく。「能登かきはちょっと小ぶりやけど、香りも味も日本一やと思っとる」と胸を張った。
 漁場の被害はあまりなかったが、作業所は散乱し、殺菌などに必要な機械も壊れた。保存していたカキも1割ほどが廃棄処分に。避難所や車中泊を経て、被災2週間後からは妻の恵子さん(72)と半壊状態の自宅で暮らす。「今も余震のたびに家を飛び出る」。
地震により作業所に散らばった能登かき(木村功商店提供)

地震により作業所に散らばった能登かき(木村功商店提供)

 カキは10~5月ごろがシーズンで、今は旬。作業所隣で「カキ小屋」と呼ばれる飲食店を運営するが、今期の営業はあきらめた。「こんな被害は生まれて初めて。落ち込んでるよ」と明かす。それでも、「直接応援したくて来た」「今度、ボランティアに行くよ」と会場で声をかけられ、「頑張って続けたいと思ってます。前に進みたい」と笑みを見せた。
「産業全体を盛り上げたい」と意気込む任田和真さん

「産業全体を盛り上げたい」と意気込む任田和真さん

 同じく会場でカキを扱う能登風土(七尾市)も、地震で倉庫や作業所が損壊。取引先も被災し、出荷も一時停止状態に。しかし、販売サイトを1月に開設すると注文が全国から相次いだ。能登風土のマネージャーの任田(とうだ)和真さん(32)は「能登で今、食べられるカキ専門店は数えるほどしかない。外へ出て能登かきを広めることで、産業全体を盛り上げられたら」と力を込めた。(中村真暁)