裏金議員の責任 まずは政倫審で説明せよ(2024年2月22日『西日本新聞』-「社説」)

 自民党派閥による政治資金パーティーの裏金事件は、組織的に裏金づくりをしていた安倍派や二階派の幹部らが、国会で説明責任をいかに果たすかが当面の焦点である。

 裏金づくりの経緯や具体的な使途は依然として不明瞭なままだ。立件を免れたからといって、関与した議員が実態をうやむやにしたままやり過ごすことは許されない。

 政治資金収支報告書に還流資金を記載しなかった両派閥の現職議員は82人いる。野党はこれらの議員を対象に、衆参両院の政治倫理審査会に出席するよう要求している。

 政倫審はロッキード事件をきっかけに、1985年に設置された。疑惑のある議員が弁明し、政治的、道義的な責任があるかどうかを審査する場として使われる。

 対象の議員が出席を申し出るか、委員の3分の1以上が申し立てて過半数が賛成すれば、出席要請を経て開催することができる。

 ただし、出席要請は拒否できる。衆院政倫審の野党委員は3分の1に満たないため、開催の可否は議員の意思次第なのが現状だ。

 自民党が野党に出席すると回答した議員は安倍派と二階派の事務総長経験者ら少人数にとどまる。これで裏金事件の説明責任を果たせるのか、よく考えてもらいたい。

 少なくとも、二階派を率いた二階俊博元幹事長、安倍派の運営に携わった幹部全員の出席は必須だ。長年にわたって違法行為を繰り返してきた派閥の幹部は政倫審から逃れられない。

 幹部以外でも、説明を希望する議員は出席を認めればよい。派閥は解散を決めた。過去のしがらみにとらわれることなく話してほしい。

 各種世論調査では、岸田文雄内閣と自民党の支持率が著しく低下している。国民の厳しい視線をどの議員も感じているはずだ。

 国会議員であるなら国会で説明を尽くす。政倫審はその第1段階と心得るべきだ。

 政倫審は原則非公開で、本人が了解すれば公開される。裏金事件に対する国民の関心の高さを考えれば、公開するのは当然だ。

 裏金事件の鍵を握る議員が出席を拒んだり、出席しても曖昧な説明に終始したりするようなら、参考人招致や証人喚問を与野党で検討する必要がある。

 証人喚問は正当な理由なく出頭を拒むことができず、うその証言をすれば偽証罪に問われる。虚偽答弁をしても罪に問われない政倫審との違いは大きい。

 与野党は政倫審開催に向けた協議を円滑に進めてもらいたい。駆け引きに過度な時間を費やすと、2024年度予算案の審議日程が窮屈になる可能性がある。

 予算案には能登半島地震の復興経費が含まれる。拙速な審議で無理な採決をすることのないように、審議時間は十分に確保すべきだ。