岸田首相、なぜ森元首相をかばう? 裏金事件、頑なに聞き取り調査を拒否(2024年3月6日『東京新聞』)

 
3月6日に開かれた参院予算委員会では、自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を巡り、岸田文雄首相が安倍派(清和政策研究会)会長だった森喜朗元首相や安倍派幹部をかばうようなやりとりがあった。
参院予算委員会で答弁する岸田文雄首相

参院予算委員会で答弁する岸田文雄首相

◆「森元首相の関与は客観的に明らか」

立憲民主党小西洋之氏は、安倍派のパーティー収入の議員側へのキックバック(還流)について、派閥の会長と事務局長(職員)で取り扱う案件として20年ほど前から行われていたことは自民党の聞き取り調査に複数の議員が証言しているとして、「(当時の会長だった)森元総理が関与していたのは客観的に明らかだ」と指摘した。
森氏に事実関係を確認した上で実態を説明するよう求めたが、岸田首相は「調査では具体的に森元総理の関与を指摘するような証言は確認されていない」などと拒否。「実態把握の努力は続ける」と言い訳のように繰り返した。
森氏は1998年から2006年にかけて、自身の首相在任期間(2000年4月~2001年4月)を除き清和政策研究会の会長を務めている。
森喜朗元首相=2022年10月

森喜朗元首相=2022年10月

◆還流継続の経緯、安倍派幹部らの証言は食い違い

小西氏は、1日の衆院政治倫理審査会(政倫審)で安倍派の西村康稔経済産業相塩谷立文科相が、いったん中止が決まったパーティー収入のキックバックが継続されることになった経緯についてそれぞれ食い違う証言をしたことについても、岸田首相自身が安倍派幹部に聞き取って確認するよう要求した。
だが、首相は「政倫審の発言の食い違いについて私自身、党としても実態把握につとめているが今現在確認はできていない」などと応じなかった。
小西氏は、岸田首相が2023年12月に「国民の信頼回復のため火の玉となって先頭に立つ」と決意を述べていたことを引き合いに、「森元総理や安倍派幹部に事実関係を確認すらしない。確認すら拒否するなら、火の玉の決意とは何なのか。線香花火程度の決意じゃないか」と批判した。
小西氏は、岸田首相に参院政倫審の参考人としての出席も求めたが、首相は「出席は考えていない」と否定した。
この日の参院予算委では、共産党の山添拓氏も岸田首相に森氏への聞き取り調査を求めた。だが、首相は「党の調査で森元総理が直接関わったという発言は確認されていない」などと繰り返すにとどめた。山添氏は、森氏と安倍派事務局長の証人喚問を要求した。

◆「森元首相への聞き取り拒否なら実態解明は不可能」

安倍派のパーティー収入の議員への還流がいつから始まったのかを巡っては、解明が全く進んでいない。
自民党内では「岸田さんに森さんの聞き取りをしようなんて思いはこれっぽっちもない」(中堅)との見方が大半だが、野党からは「長年にわたり安倍派会長を務めた森元首相への聞き取り調査を岸田首相が頑なに拒否するなら、これ以上の実態解明は不可能だ」(立憲民主党若手)との声も上がる。
一方、安倍派の下村博文文科相は既に党幹部に衆院政倫審への出席意向を伝えているが、森氏と距離があることが警戒され、実現するかどうかは見通せない。下村氏の審査が実現した場合は、森氏に関する発言が出るのかも注目される。(佐藤裕介)