食を未来につなぐ農福連携(2024年2月20日『琉球新報』-「金口木舌」)

 昨年5月、名護市の就労支援B型事業所「ワークサポートひびき」を訪ねた。市内の農家と契約し、選果を請け負う。オクラを丁寧に袋詰めする利用者らの目は生き生きとしていた。農福連携の事例の一つ

▼2020年農業センサスによると、県内の農業経営主の年齢は8割が60歳以上。新規就農者数、農業従事者の減少に歯止めがかからない。人手不足は深刻化の一途をたどる

▼名護市は農家と福祉を結ぶマッチング相談会を開いた。自治体による開催はほとんど例がない。障がい者の就労や農家の労働時間短縮が進めば、産業を守る好循環も期待できる

▼視覚障がい者を支援する事業所も相談会に参加した。視覚障がい者が作業できる環境、仕事を考える農業者らの姿もあった。顔を合わせることで分かり合う。機会の創出によって相互理解も生まれる

▼「福祉」の幅は障がい者だけにとどまらない。高齢者、生活困窮者など社会的に生きづらさを抱えた多くの人がいる。農業の先にいるのは私たち消費者。「食」の将来を支える農福連携につなげたい。