マルハラ配慮は「。」が怖い若者への媚びではない。47歳が職場観察で気づいた「老害」の特徴(2024年2月20日『All About』)

 
20代から30代の若手社員と、50代以上のベテラン社員が半々という職場のなかで、唯一40代として存在している女性は、職場の人間関係を「観察のしがいがある」と語る。「老害」化する人にも共通点があるようだ。

誰も年をとりたくてとるわけではないが、年齢だけは誰にも平等、どう抗おうと老いは確実にやってくる。若くありたいと願おうと、年相応でと諦念を持とうとかまわないが、今や30代や40代でさえ「老害」と言われてしまう時代。

確固たる信念をもつ人は「かっこいい」と言われるのに、単なる頑固は「老害」なのだ。どこがどう違うのか、どうしたら「周りの人たちの士気を下げることなく」社会の役に立つベテランになれるのだろうか。

アラフィフ女性の職場観察

「私自身、老害と言われる年齢でしょうけど、周りを見ていて感じるところはあります。うちの部署は20代から30代の若手と、50代以上が半々というアンバランスな人員なんです。その中で中間は私だけ。観察しがいがあります(笑)」

サトエさん(47歳)はそう言って笑った。みんな大人の社会人なので、表だって若手とベテランが言い争う場面はないが、ベテランの中にひとりだけ誰からも疎まれている男性がいるという。

「54歳のSさん。この人の口癖は『オレが若いときは』なんです。この一言は本当にNGだなと思います。この一言を口から出した瞬間、若手は『今のやり方を受け入れる気がないんだ』と感じるから。

紙からデジタルに変わったように、業務内容は進化して当然。いつまでも昔のやり方に固執するのは、単なる昔の人と切り捨てられるだけだから」

 「マルハラ」の受け止め方も人それぞれ

仕事のやり方だけではない。人間関係も同じことだ。いわゆる「マルハラ」と言われるようにメッセージのやりとりで句点がついていると「怒っている」と感じる若者が多い今、「そんなの知ったことか」というのは簡単。

だが、「そうなんだ」といったん受け止めて、じゃあ、どうすればいいのか、せめて自分は怒っているわけではないと伝えようと「相手側に立つ姿勢」を見せられれば、今後若手とうまくやっていけるきっかけになる。

「それは媚びとは違うと思うんです。ちなみにSさんは、マルハラのことを聞いたとき、『知ったことか、昔はスマホなんかなかったんだ、こんなの面倒なだけだな』と切って捨てるように言いました。

それはやはり、若手には『この人と一緒に仕事をしたくない』と思わせてしまう。媚びないけど同じ土俵に立つ。今の時代を知る。それができれば、昭和のおじさんももうちょっと受け入れてもらえると思うんですけどね」

自分が生きてきた時代を愛したい気持ちはわかるが、昭和が礼賛される時代とも言い切れない。令和にもおそらくよかったことはある。

常に「今」を考えることが大事

過去が長くなるにつれ、人はそこにそこはかとない郷愁を抱いてしまうのかもしれない。だが、60歳であろうが30歳であろうが、生きているのは「今」という時代。

「だから常に今を見つめて、先を考える先輩は敬意を抱かれていると思います。やはり同じ部署のベテランTさんはとても穏やかな人ですが、部下が理不尽に上層部に怒られたりすると熱くなって庇ってくれる。

『今とこれからは、彼らにかかっている。潰すような真似をするな』と役員に激怒したという噂があって、誰かが本当なのかと尋ねたら照れ笑いを浮かべていました。そこがまたかわいいと若手女性社員からキャーキャー言われてましたよ」

Tさんはいつでも「今」を大事にしている。過去にはとらわれていない。そして先を見すえている。ベテランならではの慧眼も有している。

「ベテランの過去がどんなに栄光に満ちたものでも、それが今につながっているなら聞く価値はあるけど、そうでない場合はただの自慢話にしかならない。それを当事者が意識しているかどうかですよね」

50代が過去の人々と「同じ沼」に落ちる不思議

50代社員だって、自分が20代のころは自慢話をするベテランに辟易としたことがあるはず。なのにどうしてベテランになると、過去の人たちと同じ自慢話の沼に落ちるのか。サトエさんはそれが不思議だという。


「年をとると自分の存在感を示すためには過去の話をするしかないということなんでしょうか。それは悲しいですよね。ささやかなことでも、今できる最大限のアイデアを出すとか先のことを考えて提言するとか、できるはずなのにと思います」

そうは言っても、私自身が「老害」と思われている可能性もありますけどね、とサトエさんは自虐的に笑った。ある程度の年齢になると、こういう自虐を交えないといけなくなるのも、なにやらせつないことではある。

 

 

亀山 早苗プロフィール

明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。

文:亀山 早苗(フリーライター

 

ボロボロになりながら、ひとりで仕事も恋愛も続けてきた…!!
「こんなはずじゃなかった…」わたしたちの人生

「15年間、不倫の恋を続けてしまった私」(40歳)
「父親の死をきっかけに、兄弟絶縁」(41歳) 「母親の
介護」 「結婚でも仕事もできない」(38歳)
「恋人に会社の金を貢いでキャリアのすべてを諦めた」(43歳) 「恋人の保証人になって、2000万円の借金苦」 37

と後悔の中にいるアラフォー女性15人が、
もう一度歩き出すための2年間を描いたタルポルタージュ
―生きる勇気が湧いてくる―