自民党の二階俊博元幹事長(85)が次期衆院選への不出馬を表明した25日の記者会見では、自身の年齢も不出馬の理由に入るかを問われ、「年齢に制限があるか? お前もその歳、来るんだよ」とすごみ、小声で「ばかやろう」と吐き捨てる一幕があった。最高齢政治家の複雑な心境が垣間見えたが、過去には年齢を理由に一線を退いたベテラン政治家もいる。
◆比例代表には「73歳定年制」が
◆以前も世代交代に抵抗姿勢
「年齢のことなんか、とやかく言うべきではない」
二階氏は過去にも、年齢を巡り、こだわるべきではないとの考えを強く示したことがある。
2020年6月、自民のベテラン議員らが、73歳定年制の撤廃を求める要請書を、当時幹事長だった二階氏に提出した。これに対して45歳以下の議員らで構成する党青年局が反発。青年局の議員は「若い人たちにチャンスを与えるためにも重要な制度だ」と定年制の堅持を訴えたが、二階氏はベテラン議員らに「(定年制撤廃を求める要請内容は)当たり前のことだ」と激励していた。
◆「余力があるうちに」引退した議員も
自民が衆院比例代表候補に「73歳定年制」を導入したのは03年の衆院選から。世代交代でイメージアップを図る狙いがあった。ベテラン勢は抵抗を見せたが、結果的に中曽根康弘(当時85歳)、宮沢喜一(同84歳)の両元首相の引退につながった。
永田町では、「定年」を押し付けられることを嫌う高齢議員が少なくないが、年齢を理由に自ら身を引いた議員もいる。21年に75歳で引退した大島理森元衆院議長は「余力のあるうちに『新たなともしび』をつくることが政治家としての責任だ」と説明。同じく21年に73歳で引退した赤松広隆元衆院副議長は、本紙の取材に「いつまでも続けては、若い人の芽を摘んでしまうことになる」と語っていた。
◆意見するような空気がない
故・中曽根康弘元首相=2005年撮影
高齢について問われ「ばかやろう」と口走った二階氏の対応について、立憲民主党の泉健太代表は25日、記者団に「(二階氏に)意見をするような環境や空気は自民党内に存在しないし、本人も好きなように発言している」と語った。共産党の小池晃書記局長も記者会見で「ちょっと言うことが違う。ちゃんと(裏金事件の)真相を語れと言いたい」と批判した。
浦和大の林大介准教授(政治学)は「政治家は有権者が選ぶか選ばないかで、年齢は関係ない。だが、ベテラン議員は自分の議席を守ればいいだけではなく、若い人がもっと選挙に出たり政治の場でリーダーシップをとったりできる社会をつくらなければいけない。そこが問われてくるし、有権者も自分たちの代弁者をよく考えて選ぶ必要がある」と話す。(坂田奈央、我那覇圭)