逆風「ジャイアン」に「刺客」が挑む 自民裏金問題の象徴・東京24区、有権者の判断は(2024年10月16日『日刊スポーツ』)

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第50回衆院選
 衆院選は15日、公示された。各候補が465議席小選挙区289、比例代表176)を争う戦い。各党党首は重点区で第一声をあげた。争点の1つ、派閥裏金事件を受けて自民党に公認されなかった無所属の大物のうち、東京24区の萩生田光一・元政調会長(61)は街頭演説で謝罪と出直しを口にした。党の地元支部や都連会長までが応援に並び、事実上「自民党候補」の雰囲気。一方、「刺客」を自称する立憲民主党有田芳生参院議員(72)は「裏金べったりの政治を終わらせよう」と、訴えた。衆院選の投開票は10月27日。
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 「自民党公認を受けられず今までなかったような選挙だが、何が何でも当選させる」。八王子市で行われた萩生田氏の第一声。選対幹部は強い口調で訴えた。
 萩生田氏は、政治資金収支報告書に5年で2728万円の不記載があった。3番目に多い額。政治倫理審査会にも出席せず、非公認となった萩生田氏は「派閥のルールを踏襲したとはいえ、どこかで足を止め考え直さないといけなかった」と釈明しつつ「意図して裏金をつくるとか私的流用、ましてや脱税まがいなどの事実は一切ない」と主張。市議時代から33年、地元で活動してきたとして「腰掛けで八王子を選んだ(野党の)人たちに任せるわけにはいかない」と強気に語ったが、「裏金!」などのヤジを浴びた。
 ただ、非公認でも、初宿和夫市長や地元の自民党支部の関係者が顔をそろえた。自民党井上信治東京都連会長や有村治子参院議員も応援に入った。自民党は個人的関係での所属議員の応援は「黙認」(関係者)している。都連は、女性票に影響力を持つ小池百合子都知事にも応援を要請している。聴衆からは「事実上の自民党候補じゃないか」と、疑問の声も聞かれた。
 最近は圧倒的強さで当選を重ねてきた「自民党ジャイアン」萩生田氏だが、今回は小選挙区で敗れれば落選だ。陣営の危機感はマックスで、緊張感も漂う。選挙カーには「比例代表自民党へ」の文字が残ったままだった。
 一方、萩生田氏が関係を指摘されてきた世界平和統一家庭連合(旧統一教会)をジャーナリストとして追い続けてきた有田氏は、萩生田氏の「刺客」を自称。「裏金だけでなく、カルト教団にべったりの政治を終わらせよう。石にかじりついても岩をこじあけても、最後まで全力を尽くす」と、強い覚悟を示した。この選挙区を公示後第一声に選び、有田氏の応援に駆けつけた立民の野田佳彦代表は「裏、裏、裏。裏金議員を裏で支える自民党政治に決別しよう」と訴えた。
 参政党の与倉さゆり氏(40)、無所属の畑尻文夫氏(69)、国民民主党浦川祐輔氏(31)、日本維新の会の佐藤由美氏(52)も街頭で支持を訴えた。かつてない逆風戦の萩生田氏に、野党候補が乱立した形の構図。石破茂首相が踏み切った「裏金隠し衆院選」の象徴区の結果は、自民党の今後の党勢にも影響しかねない。【中山知子】