攻撃型ドローン、LAWS…自衛隊の「無人兵器」導入の現状は? 「殺人ロボ」に国際的懸念 各党の姿勢は(2024年10月16日『東京新聞』)

 日本の防衛分野でドローンなどの無人アセット(装備品)が存在感を高めている。防衛省は初の攻撃型ドローンの取得など関連費1000億円超を2025年度予算で概算要求した。衆院選自民党はドローンや人工知能(AI)の活用を公約に掲げ、立憲民主党は防衛分野の「無人化・省人化」を明記。定員割れが続く自衛隊は「人手不足の切り札になる」と無人アセットに期待を寄せるが、リスクや倫理面の議論は道半ばだ。(大野暢子)

◆「どちらが効率的な戦い方かは明らかだ」

自衛隊が7月、東シナ海の警戒・監視の目的で試験運用した大型無人機=防衛省提供

 国防族議員として知られる石破茂首相は、多様な無人機が大量投入されているロシアのウクライナ侵攻が起きる前から無人機に注目。2020年7月のBS番組で、将来的に自衛隊保有すべき装備の例として「無人攻撃機もあり得る」と指摘していた。防衛省幹部は「ウクライナでは1台数万円のドローンが戦車を破壊している。どちらが効率的な戦い方かは明らかだ」と強調する。

 これまで自衛隊無人機の運用は警戒・監視や情報収集が中心だったが、2025年度には攻撃型ドローンを30億円かけて取得する方針。戦闘機の周囲を飛行し攻撃を支える無人機の研究も本格化する見込みで、防衛省によると将来はAI搭載も検討する。

◆「完全自律型」の兵器の開発を行う意図はない

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自衛隊が7月、東シナ海の警戒・監視の目的で試験運用した大型無人機=防衛省提供

 攻撃への心理的なためらいがないAI兵器に殺傷能力を持たせることには、倫理的な問題が指摘される。近年議論となっているのは「自律型致死兵器システム(LAWS)」の存在。起動後に操作を加えなくても自ら標的を選んで襲う「殺人ロボット」と化す恐れがある。衆院選公約では公明党がLAWS規制を訴え、共産党はAIの軍事利用に反対している。

 

中谷元防衛相は10月上旬の記者会見で「完全自律型の自主性を持つ兵器の開発を行う意図はない」と説明。だが、防衛省は一定の自律性がある攻撃型兵器の開発までは否定していない。

 国連総会は2023年12月、LAWSへの「対応が急務」とする決議を日米など152カ国の賛成で採択。国連のグテレス事務総長は、人の操作なしに命を奪う兵器の禁止に向け、2026年までに法的拘束力のある文書の取りまとめを各国に求めた。

 それでも技術で優位に立ちたいという各国の思惑が絡み足並みは乱れている。2023年の決議にロシアやインドなど4カ国が反対、中国や北朝鮮イスラエルなど11カ国は棄権した。日本外務省も「LAWSへの対応は各国の隔たりが大きい」とし、法的拘束力のある文書の締結には消極的だ。

 自律型致死兵器システム 人工知能(AI)によって自ら敵を見分け、殺傷する能力を備えた兵器。英語の「Lethal Autonomous Weapons Systems」の頭文字をとって「LAWS(ローズ)」が略称。火薬、核兵器に次ぐ「第3の軍事革命」になるとされる。

池内了名誉教授「完全自律型でなくても非人道性が高い」

 軍事研究に詳しい池内了・総合研究大学院大名誉教授(宇宙物理学)の話 過去にも地雷など攻撃側の負担が軽く安価な兵器が登場するたび、過剰に造られ、過剰に使われてきた。安全な場所から遠隔操作で人を殺傷するAI兵器は、完全自律型でなくても非人道性が高い。政府が開発を否定する「完全自律型の自主性を有する兵器」と、その他の兵器との境界も曖昧だ。誤爆時の責任が不明瞭になる恐れもある。開発や取得より倫理面の熟議が先だ。

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