党都道府県連主催の講演会でも引っ張りだこの石破氏は当初、勝敗を分けるポイントは「地方票の出方次第」と語っていた。しかし、過去の総裁選では、歯に衣着せぬ発言が反発を招き、議員票が伸び悩んだ経緯がある。選挙戦序盤で地方票で手応えを感じると、「次は議員票だ」と強調した。
象徴的だったのが党内に一定の影響力を持つ岸田文雄首相へのアプローチだ。25日に経済政策に関する会見を開き、「岸田政権の成果を引き継ぐ」と繰り返した。また、27日の決選投票前の演説では「嫌な思いをされた方が多かったかと思う」と謝罪を口にした。
パーティー収入不記載事件を受けて派閥の影響力が低下し、「一本釣り」が可能になったことも奏功した。かつては無派閥議員への働きかけが中心だったが、「石破氏が支援を求めて電話をかけられる範囲が格段に広がった」(選対幹部)。
とはいえ、選択的夫婦別姓制度導入への賛意や、前例のない「女系天皇」を排除しない考えを示したことを警戒する保守層は今も少なくない。ごり押しすれば衆院選や参院選で岩盤支持層を失う可能性がある。(末崎慎太郎)
27日投開票の自民党総裁選で新総裁に選ばれた石破茂元幹事長(67)は、派閥パーティー収入不記載事件に関し「党として厳しく臨む」と語り、各社の世論調査でも「政治とカネ」の問題を重視する層から支持されている。
選択的夫婦別姓については、制度導入に賛成の考えを示し、「夫婦が別姓になると家族が崩壊するとか、よく分からない理屈があるが、やらない理由がよく分からない」と語る。